「あなたの想いを製品にして、社会に実装する」を支援する存在でありたい
ースタートアップ支援について教えてください。
山本:プレスリリースも出していますが、水中ドローンにまつわる事業、これは中国にあるスタートアップの会社をお手伝いしています。あとは、ボストンのリアルタイムロボティクスという会社があり、この会社はモーションプランニング技術を用いて、ロボットの分野に進出しているスタートアップです。こういった会社に対して、当社は全方位的に支援しています。それこそものづくりだけではなく、実際に出資をさせていただくこともあり、その技術を日本市場に紹介するような代理店としてのお手伝いをさせていただいたり。実際にロボットメーカーに紹介して、研究開発のお手伝いをさせていただいています。
水中ドローンの会社に関しては、それを輸入するプロセスの中で、実際に修理・メンテナンスの事業をさせていただいています。特にプレスリリースにおいて、何を話して、何を話しちゃいけないのかって、とても大事ですよね。通常は、技術的に重要なところをプレスリリースだと喜んで喋ってしまうと、公知の事実になって、知的財産権として主張できなくなります。そこで、知的財産の観点から、世界の特許群を調べた上で、言っていいこと・悪いことを把握する。広報のプロフェッショナルが当社にはおりますから、プレスの方に対して、どの場所で、どういった言葉づかいで話をするべきなのか。こういったことを予めスタートアップの会社と打ち合わせさせていただいて、それでプレスリリースに臨みます。
起業家の方々を含めた、「こんなことをしたい」と思っていることを、実際に製品にして社会に実装することが当社の使命なんです。「革新的なものづくりサービスを提供し、あなたの想いを製品にして、社会に実装する」、これが当社のビジョンです。「あなたの」というのは起業家を指して言っている場合もあれば、大手企業におられるエンジニアで、「こんな製品を出したい」と思っておられる方もいたり。もしくは当社の中にいるエンジニアが、「これを製品にしたいな」っていうのがあるんですよね。この社会問題を解決するため、製品にして売れれば終わりじゃなく、実際に使っていただき、成果が出るところまでの社会実装をお手伝いするのが当社のビジョンなので、とことんスタートアップとお付き合いしていこう、というのが当社の姿勢です。
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「プリント基板を実際にやっている会社が、プリント基板がなくなる事業に取り組む」とは?
ー今後の成長戦略について教えてください。
山本:「あなたの想いを製品にして、社会に実装する」、このビジョンでやっていますから、世の中の今後5年後10年後を考えたときに、「どのあたりがものづくりにおいて課題になるのか?」これにはいくつかポイントがあると思っています。
1つは、人手が非常に不足している、日本の労働市場は非常にそういう状況にあると思いますが、ロボットを使った生産現場の革新です。ここをしっかりとお手伝いしていきたいと思っています。
実際にロボットがある工場現場は、ほとんど人がいない。人がいなくなることを前提とした工場現場です。例えば半導体の生産工程は、だいたいそうなっている場合が多いです。
または、人はいるんだけれども、ロボットは必ず柵で囲われていて、人間がその中に入れない。人間がもしも入っちゃって、ロボットが変な動きをしてぶつかったら、命とりになってしまいますから。ロボットと人間が完全に離れて仕事をするというのが、今のものづくりの生産現場になっています。
これは大きく革新していく必要があります。やはり人間とロボットが協調すること、つまり、ロボットアームは出てくるんだけれど、人間はパッと手を出したときに避けてしまう。避けることで、ロボットにさせるにはまだ早いけれども、人間がやるには非効率。ちょっと人手がいない、もしくはヒューマンエラー。人間ならではのミスをしてしまい、不良品が出てしまう。そういったところを解決するソリューションが求められています。
当社はリアルタイムロボティクスと組んで、モーションプランニングのチップ。この技術を使って、当社の生産現場を熟知したノウハウを用いて、革新的なロボット。人間と協調するロボットを開発して、市場に出していきたいと思っています。
あとは、だいたい製品の中にはプリント基板が入っている場合が多いんです。パソコンだとか、スマホだとか、カチャっと開くと、中に緑色の基盤が入っていたり、ペラペラとしたようなフレキシブル基板というものが入っていたりします。長い時間軸で見ますと、これからは基盤がいらない時代が来ると思っています。「基盤レス」なんて言葉も、メディアの中では少しずつ出てきているんですが、当社はそこに取り組んでいこうと思っています。「プリント基板を実際にやっている会社が、プリント基板がなくなることに取り組むって何なんだ?」、既存事業を破壊しかねないような話と思われる方が多いかもしれません。
これはどういうことかと言いますと、MIDと呼んでいる言葉がありまして、これは、メカトロニック・インテグレーテッド・デバイスの略です。電気的に、機械的に統合された部品という意味です。
樹脂で立体に成形された基盤があり、筐体があります。この筐体をパカッと開くと、たとえば筐体そのものの内壁。内側に対して、電子回路をひきます。それに対して電子部品を載せていくんです。今は筐体の中に基盤が入っているんですが、今後は基盤そのものがいらない、基盤そのものは筐体と一体化されています。
そうすることによって、製品そのものが小型化・軽量化・そして高機能化に持っていくことに寄与すると思っています。これからの製品、例えば補聴器であったり、ウェアラブルなものがどんどん体に接します。もしくは、体内の中に入っていき、バイタルデータがどんどん必要とされるようになります。データをいろいろと活用しながら、そのデータの取引が行われる。そういう時代ですから、どれだけ軽量で小さくて、そして高機能なものを人間の体の中に実装していくか。人間の皮膚につけていくか、というのは極めて大事な観点です。
基盤レスに必要とされるような技術。ここは1つ、MIDであったり、3次元に電子部品を実装させていく技術を当社は持っています。その組み合わせを生かして、ものづくりで革新的なことをやっていきたいと思っています。
最後に1つです。いろいろと新規事業部がありますが、工場を運営する人達にとって、スタートアップの企業にとって、必ずしも革新的な技術であったりサービスがほしいとは限らないことがあります。中古の設備でもよかったり、古いローテクな部品であっても構わないということです。
でも、それをどこから調達すればいいかわからない。今の世の中のスタートアップの企業がベンチャーキャピタリストとかに聞いて、「どこかいいところないですかね?」と聞き、例えば「こういう商社がある」と教えてもらい商社に行っても、「そんなに小さいロットではうちは扱えません」と門前払いになるんです。我々はそこに社会の課題があると思っていて、これを解決していこうと思っています。
当社としては、中古となった装置であったり部品を、売りたい人と買いたい人を仲介するような、FAマーケットプレイスという市場を立ち上げました。ウェブサイトも公開しており、それに載せて、売りたい人と買いたい人が出会える。これはスタートアップの会社にとっても、部品を調達するときにそこをクリックすれば探せるので、非常に調達しやすくなるんです。
こういったものづくりに関することでも、中古のものでも扱える。もしくは、壊れたものを修理する、そういうサービスもスタートしました。壊れた基盤を直したい人と、直してほしい人を仲介する「基板修理ドットコム」というウェブサイト上でのマッチングビジネスも始めました。
「作ったけれど壊れる。別に新品がほしいわけではない」こういった方々の要望があるので、それに応えていく事業です。これからは循環型の社会になっていきますので、やはり壊れたものを捨てるんじゃなく、上手く使い回していくという、持続可能な社会実現の課題の1つですから、そこに寄与していきたいと思っています。
そういったところのパッケージをセットにしながらスタートアップの企業のR&Dを推進し、これを絶対に製品にしたいと思っている方々のお手伝いをしていく。そういった存在に、JOHNANとしてはなりたいと思っています。
「人との出会いを大事にしながら、新しいことに挑戦したい」
ー視聴者へのメッセージをお願いします。
山本:起業しようと思ったら、「何か自分でアイデアを持っていなきゃいけないんじゃないか?」とか「誰にも負けないような事業計画がないとできないんじゃないか?」、「そもそも自分っていったい何のために生きているのか」「自分で何したいのかわからないんだけれども、何となく心の中にモヤッとしたものを持っている」。でも、何かに思い切って挑戦したい。ここで変わらなきゃいけない。でも、何をしていいかわからない。という人が多いと思います。私自身もそういう時代がありました。当社は何かに挑戦したいと思っている方を、探しています。
何でもかんでも自分のやりたいことって見つかるものじゃないんですよね。それは人との出会いの中で、「自分の強みってこれかな?」と見つかったり、「俺のやりたいことはこれなのかな?」とあとで気づくことはいっぱいあるんですよね。人間ってそんなに強いものじゃないですよ。
やっぱり人との出会いを大事にしながら、新しいことに挑戦したい。そういった方々と仕事をしていきたいと思っています。例えば地方創生だとか、スタートアップのものづくりについて手伝ってみたいとか、それは別にエンジニアじゃなくてもいいんです。もちろんエンジニアも探していますが、修理できる人だけじゃなく、セールスマーケティングの方であっても、ベンチャーキャピタリストの方であっても、何かことを起こして、社会に製品をつくって実装してやろうじゃないかと。そういった方はぜひウェルカムでお迎えしたいと思っています。