今回のインタビューは、アイリスオーヤマ株式会社の代表取締役社長である大山健太郎さんに「注目している分野」「アイリスオーヤマの3つのイノベーション」「新しい市場の見つけ方」についてお話を伺いました。
【経歴】
19歳で家業を継承、大山ブロー工業所(現アイリスオーヤマ)代表者に就任。 工場を国内8カ所に建設。1992年アメリカ、1996年中国、1998年 オランダなどに現地法人を設立し、現地生産、現地販売で事業を展開。 地方から世界で展開するグローカル企業に成長させ、現在に至る。

仙台発のグローバル企業

アイリスオーヤマは、本社は宮城県仙台ですが、実はグローバル企業なんです。グループだけでも23社あります。
国内も北海道から九州まで工場が8工場あるということで、生活用品ではおかげさまでNo.1メーカーというポジションにいます。
「生活用品」というと非常に幅が広いですが、アイリスが主にやっているのは「快適生活の支援をする」ということです。
園芸用品やペット用品、あるいはクリアな収納用品だとか、どちらかというと今までなかった潜在ニーズを創造するという形で、日本の快適生活の分野を作り上げてきました。
海外展開の中での成功事例としては、アメリカやヨーロッパ、中国、韓国において「地産地消」という形で、現地で工場をつくり、現地で販売するということをやっています。

注目している分野

今まではアイリスオーヤマは、「生活の中の不満を解決する」ということで、コンセプトは「ホームソリューション」。
要するに、家庭の中の問題発見・問題解決という形で、不満を解消するためにやってきました。
今年の3月11日で東日本大震災から丸5年になりますが、当社は宮城県を代表する企業ということもあり、全国各地からたくさんの支援・ボランティアをいただきました。
そういったこともあり、被災企業として何とか日本に貢献したいという想いで、「ホームソリューション」から「ジャパンソリューション」に変わってきています。
 
では、日本の問題とは何なのか。もちろん人口減少などの社会現象もありますが、そうではなく生活シーンで考えていくと、今、原子力発電が1基動いている中で、「節電」というものが大きな社会的テーマです。
それを踏まえて、当社がLEDで節電を促すということで、一気にLED照明の商品開発の強化をしています。
2番目に注力していることとして、東北はやはり第一次産業が中心で、東北のお米は全国の中でも気候のおかげで非常に美味しいのです。この美味しいお米を全国に普及させるために精米事業をやっています。
 
もう1点は、今、日本の輸出産業であった電気製品がここへ来て非常に低迷しています。
そのため、大手家電メーカーでもリストラされる時代です。優秀な人材が海外に流出するのを防ぎたいということで、そういう技術者を当社で雇用・採用し、そしてこの家電製品の開発をやっています。
 
まとめると、我々のジャパンソリューションのテーマは3つで、「節電」「お米」「家電製品」というところに、今会社は大きくシフトしています。

アイリスオーヤマの3つのイノベーション

アイリスには3つのイノベーションがあります。
1つは「業態メーカーベンダー」です
なかなか聞き慣れない言葉だと思いますが、製造業は業種業なんです。金属を作っている会社は金属、プラスチックを作る会社はプラスチック、住宅産業は住宅、という業種に分かれるんですね。
当社のプラスチックの構成は2割くらい。あとの8割は異素材という、金属であったり、木であったり、紙であったり。
あるいはLED照明や家電、お米であったりと、非常に幅広い素材をものづくりに役立てているわけです。そんな会社は、業態メーカーではほとんど見られません。
 
本来製造業というのは、卸売業あるいは流通業を経由してエンドユーザーに渡すわけですが、当社の場合は既存の問屋ルートではなく、我々がメーカーでありながら問屋の機能を兼ね備え、ダイレクトに小売業さんに商品を提供しています。
そういったベンダー機能を強化しようという考えから、品揃えが必要となり、品揃えのために業態化したということが当社の一番大きなイノベーションだと言えます。
 
2つ目は、先ほどもあったように、普通の企業は今ある顕在化した商品をブラッシュアップして、品質を高め、価格を下げていくモデルですが、我々の場合は需要を創造しています。
新しい、今まで気づかなかったマーケットを大きくしていくという形の需要創造です。
当社の需要創造のおかげで、まさに日本のガーデニングブームやペットブームを下支えしたわけですし、世界を変えたのがクリア収納ということで「しまう収納」を「探す収納」という形にし、より便利な収納へと世界を変えたわけです。
 
そして3番目が「市場創造」です。メーカーとしてものを作っても「どこで流通していくのか」という課題が出てきて、ここが非常に大事になっていきます。
そこで、40年前に着目したのがホームセンターでした。ロードサイドのDIY(ドゥ・イット・ユアセルフ=日曜大工)の店。ここを基盤にして、商品の市場を作ってきました。
本来、ホームセンターというのは日曜大工のお店ですが、今では園芸やペットを扱っていたりします。
まさにアイリスオーヤマがなければ今のホームセンターの基盤はなかっただろうと。そのように思っています(笑)
 
そういう意味では、単に消費者のニーズをつかまえる需要創造だけではなく、流通にまでイノベーション起こすということです。
最近では、リアル店舗だけではなく、アイリスプラザを中心にネットの売上構成も非常に大きくなっています。

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