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今注目のキーワード「ホラクラシー組織」の実態とは?
➖事業内容を教えてください
中川:「リモートワークを当たり前にする」のミッションの元、リモートワークを中心としたBPO事業やHR事業を手がけています。2014年の9月に創業したので、今で5年目の会社です。
ミッションの通り、リモートワーカー側の課題を解決しています。基本はBtoBビジネスですが、企業の課題というよりは、働く側の課題を扱っています。
「場所が違うだけで、ここまで条件が違うのはおかしい」
➖「リモートワークを当たり前にする」という世界をなぜ実現したいと思ったのか、その背景を教えてください
中川:創業する前に、クラウドソーシング系の会社とお仕事をすることがありました。その中でリモートワークという働き方を考えたところ、法整備もちゃんとしていないし、ある程度仕事の環境はあるものの、普通に仕事をするのと比べると、正直いい環境ではないと思うことが横行していました。
昨今だいぶ良くなってきましたけど、それでも当時は時間給に直すと、「本当にこれで仕事して大丈夫?」と思うことが多くあって。そういう現状をたくさん見てきて「場所が違うだけで、ここまで条件が違うのはおかしい」と思い、普通の形に戻そうとしたのがきっかけです。
➖起業の決め手はなんだったのでしょうか?
中川:もともと前職でいた会社がBPOの会社で、BPO業界の中では人手不足が問題になり始めていました。「採れないなら海外の人材をスカウトしようか」とか「オフショアやろう」と考えましたが、あとニアショアという考えがあり、リモートワーカーという選択肢がありました。
リモートワーカーも、たくさん人が来てくれました。ただ、来てくれるんですけれど、既存の仕組みの中ではうまく動かせない。前の会社が動かせないだけではなく、プラットフォーマー側も、「いや、そんなもんでしょ」という感じでやってしまっている現状でした。
それを見た段階で、「これはなんとかしなきゃいけない」と思いました。課題解決しなきゃいけない既存のプレイヤーは、そのことをあまり考えていないし、それを今問題として顕在化させているプレイヤーも解決させる手段がない。ビジネスチャンスはありそうだと思ったのが1つですね。
あと、自分はこの会社をやる前に1回小売店をやっていて、今回は外部からの資金も入って、事業を進めやすかったということもあります。
放っておいても成果・結果が出せる人達がいる状況を作り出そうとした結果、ホラクラシー組織という言葉があった
➖ホラクラシー組織という形は、会社を起ち上げたときからやろうと思っていたことなのでしょうか?
中川:まず「ホラクラシー」という言葉が出てきたのが2年くらい前からです。最近新聞とかいろんなところでホラクラシー組織と言われていますが、あれは「ホラクラシー」という定義があった上で使っているわけではなく、ヒエラルキーじゃなかったらホラクラシーという意味で言っていると思います。非ヒエラルキーのことをホラクラシーと今は呼んでいます。
我々の会社の場合、組織形態がヒエラルキーとかホラクラシーとか、そもそも意識していません。普通に会社を起ち上げて、フルリモートワークでやっていました。フルリモートワークは、どちらかというと就業時間の自由度を求めるような方が多いです。もちろん就業時間が固定されている人もたくさんいますが、普通の会社みたいに働き方を全部揃えること、例えば「あなたはスーツで来てください」「何時に来てください」「あなたの部署はどこです」「こういう動き方をしてください」「お昼時間はこの時間帯です」ということを決めません。それを決められることを好む人が多いのなら、我々みたいな会社は必要ないですし、そもそも日本は人手不足になっていないと思います。
そういう組織が必要だと気づき、いくつか試行錯誤しました。いくつか縛ろうとしたこともありますし、それをやめようとしたこともたくさんあります。その中で、大枠は放っておけばいいんじゃないかという結論に至りました。「放っておいても成果・結果が出せる人達がいる状況のほうがベストだよね」という方向に舵を切っていったら、ホラクラシー組織という言葉があったので、その名前を借りてきたというだけです。
➖マネジメントせずとも自立している、そんな組織を目指していらっしゃるということですか?
中川:マネジメントしないというと、ちょっと語弊があるんですけれどね。組織としてのマネジメントはしますが、その人を成長させたり、その人を管理監督するためのマネジメントというのはしていません。
オフラインワークをする人達の仕事が理解されなくなってくることが一番の問題
➖フルリモートワークをやっていくにあたり、難しかったこと、困ったことはありましたか?
中川:フルリモートワークに関してはあまりないですね。問題が出るとしたら、オフラインとの差という話だけです。それはリモートワークに対してオフラインが優れているという話ではなく、オフラインワークをせざるを得ない人達の立場が、リモートワーカーに比べて低くなってしまいます。
オフラインワークをする人達の仕事が理解されなくなってくることのほうが問題かなという感覚です。例えば「今日ここに取材します」と言って来てくれる人がいますが、この人達のことを、普通のリモートワークをしている弊社の社員は知らないわけです。
だから、ある人が移動している時間自体が、他の人達からするとある種の無駄なんです。その無駄な時間が、無駄な作業にしか見えなくなること。でも、逆に考えたら当たり前ですよね。皆だって移動してくるじゃないですか。通勤してくるし、普通にそこのオフィスにいていろいろやっていますよね。これが逆転すると、急に無駄になる。そこの温度感の差を詰めたりすることのほうが難しいかなと。
「自立できている人でしか自立できた環境で仕事ができない」のはバイアスでしかない
➖どういう人を組織に入れるのかが大事で、自立性や主体性が求められるように感じました。採用時にそういう点を意識されていますか?
中川:まず、それはもうバイアスですね。自立できている人でしか自立できた環境で仕事ができない、ということ自体がバイアスです。自分の会社の中から100人をテストサンプルでとって、どういう環境におけばどれくらいのパフォーマンスをするのか、ということをテストで数値化した人はいますか?それをしかも、オフラインの就業環境と正確に対比した上でどっちのほうが優れているという検証をとったことはあるんですか?という話をすると、ほとんどの人がとったことがないわけです。
つまり、それはただのバイアスでしかなくて、そこはどちらでも変わりません。別に採用のフィルターを高くしようが低くしようが同じことです。集中できる人はオフィスであっても家であっても集中するし、駄目な人はオフィスに来てもYouTubeを見ているし、家でもYouTubeを見ている。基本的にはただそれだけの話だと思います。
普通の会社と一緒です。やることは決まっています。それに対して結果を出せるか出せないか。出せなければ給料も下がって辞めていくことになるし、出せれば給料も上がって辞めずに続けることになる、シンプルにそれだけですね。
私が目指している会社の世界としては、100人応募がきたら100人採用して、100人が活躍できる世界です。それが作れないのなら、それはざっくり言うと、組織が悪いと思います。
「当たり前に起きることを、当たり前に捉えておく」
➖事業が成長できている、成功している秘訣はどこにあると思いますか?
中川:すごくシンプルで、「当たり前に起きることを、当たり前に捉えておく」ということだけです。それしかないなと思っています。例えば人口は減少することはもうわかっているわけです。下手したら10年くらい前からわかっていました。いつジェットコースターのように急降下するのも、統計上わかっていました。それに対して国も施策を打ち、景気が落ち続けないようにいろんなこともやってきました。そんなことは皆わかっていることなので、じゃあ普通に手をうちましょうよ、と。待っていて、あとは何年か、1年2年、できるだけ長生きできるタイミングに置いておいて、あとはそこを通過したら終わりです。
不動産の価格が上がりそうだと思うから、その不動産を買うわけですよね。それの根拠は何もないけれど、「コンサルタントに言われたから」と言って買っていては失敗します。自分である程度根拠があって、一次情報を完全に得ている状態で、しかもそれがオープンな一次情報もあれば、クローズな一次情報もあるわけです。オープンな一次情報があって、当たり前のようにここに買っておけばいいのに、というところに対して、自分が思っている手段があれば、買ってあげればいいと思います。
➖今後の成長戦略について教えてください
中川:我々は「労働革命で人を自由に」というビジョンと、「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げています。だから、やらなきゃいけないのはリモートワーカーの数を圧倒的に増やすということです。
弊社に来ている人達で、今のところ就業機会を何らかのかたちで得ている人、それは、就業が完了したというよりは、就業の機会自体に接触してもらえたというような人でも数が増えているので、多分全体の2、3%しかいません。だから、100人来たら2、3人にしか仕事の機会というのが提供できていないんです。ですので、基本的にはバリエーションを増やして、数を増やしていくだけです。
➖サービス展開としてはいかがでしょうか?
中川:リモートワークとか新しい働き方、さらにそれを総称した先にあるリソースの考え方というのは、ざっくりいうと分散型労働という世界観で集約してくると思っています。今までの世界観は全部集合型労働ですね。集合型労働というのは、基本的には工場形態を中心にしています。工場形態がじゃあなぜ集合労働してきたかというと、エネルギー効率がいいからですね。
人のエネルギー効率がいいわけではなく、昔だと水車などの発電は、動力源が特定の場所にある。それを建築する場所の近くに人力を集めることで全体の生産効率が上がるというロジックのもとで、集合労働がスタートしています。
この集合労働の生産効率。要するに、生産ライン管理をして全てをマネジメントしていきながらコントロールする、という手法が確立したので、それを会社というような組織の中に当てはめていって、ヒエラルキーが出来上がったのですが、その仕組みが、インターネットのおかげでだいぶ崩れています。
つまり、だんだん集合型労働によるマネジメントコストの摩擦の低減というものと、都市部に人が通勤をし、そこで仕事をして帰っていくような、個人のコスト構造を全部統合した時のバランスがもう崩れちゃっているんですよね。
要するに、社員を来させるコストを会社が持たないほうが、全体の生産効率性が上がるという状況に差し掛かっているということです。実は、会社は皆さんをリモートワークさせたくないと思っているわけではなく、生産効率性が上がり、採用率が上がり、皆がある程度会社から見て安心して労働してくれるのであれば、やってもいいと考えているわけです。
ですので、そこの環境を整えるということを、企業側には提供していくことは、やってもいいかなと思っています。
➖視聴者へのメッセージをお願いします
中川:シンプルに、やりたければすぐにやったらいいんじゃないでしょうか。今は業界の環境的にはとてもいいので、やりたければすぐにやったほうがいいです。止まっている理由は特にないです、本当に。