◎上場3年前に行うべき7つのポイント

(1)上場準備責任者の設置
(2)ショートレビュー
(3)財務諸表監査対応(会計制度、経理体制の整備)
(4)予算管理制度の準備
(5)関連当事者との取引の見直し、関係会社の整理
(6)資本構成
(7)内部統制とリスク管理

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上場に必要なこととは

ここ最近、上場ブームはまたひと段落した感がありますが、今後、東京オリンピックを控え2020年の直前には株式市場は再度活気を取り戻すでしょう。

では、オリンピックの年までにまだ3年以上の期間がある中で、上場3年前からすべきこととしてどのようなことがあるのでしょうか、ここで整理したいと思います。

まず、上場するためには申請期の直前と、直前々期の2期間分の監査証明が必要となります。
下表の図を基に2020年7月を上場のXデーとすると2019年3月期(2018年4月~2019年3月)と2018年3月期(2017年4月~2018年3月)の監査証明が必要になります。
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出典:www.jpx.co.jp

とはいえ、直前々期に、上場経験のない会社がいきなり上場企業予備軍として、他の上場企業と同様に監査法人の監査に耐えうる体制を整備できるかどうか、でいえば正直なところ、かなり困難が伴うでしょう。
そのため、2017年3月期(2016年4月~2017年3月)のところで、上場準備と合わせて、監査に耐えうる体制づくりをしていくことになります。

本記事では、上場準備のうち、特に上場3年前から実行すべき社内体制整備のポイントを整理しつつ、筆者の上場準備の経験から、注意すべき事項を述べたいと思います。

上場準備のために3年前からすべきこと

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編集部作成

(1)上場準備責任者の設置

まずは、上場準備責任者を設置しましょう。実際に上場企業で、有価証券報告書の作成対応を経験している人材や、上場準備~上場まで経験した人材を中途で採用するか、自社内で未経験の経理責任者や経営企画の責任者を任命するかは自社の経営判断次第ですが、責任者かどうかにかかわらず、経験者がいるほうがスムーズに進むでしょう。

注意点として、この時期に経営者は、上場準備のための人材の売り込みや紹介を多く受けると思いますが、実務のできるホンモノの担当者は意外と少ない、ということです。
金融機関OBで物事はよく知ってるが手は動かないとか、上場準備の実務経験があると言っていたのに実際は何も知らなかったなど、よく聞く話です。

以上から、筆者としては、相当に仕事ぶりや人柄を経営陣が知っている人材でもない限り、まずは自社内の担当者を選任し、適宜、経験者を中途採用したり、外部からのサポートを受けることをお勧めします。
上場準備の責任者は、上場スケジュール管理、上場関連取引先の窓口、中期経営計画策定、社内管理体制の整備、上場準備書類取りまとめなど、多くの役割を統括して対応することになります。
いずれにせよ、上場準備の責任者は、上場後においても会社の開示体制含む上場企業の維持、発展のためのキーマンでもありますから慎重に選びましょう。

 

(2)ショートレビュー

責任者を決めたら、監査法人とショートレビューの契約を結び、予算管理、経営管理体制、関係会社の整理、会計制度、業務プロセスや内部統制等について会社の現状の組織のレベルについて、レビューを受け、経営陣や社員へのインタビュー等を実施し、課題を抽出します。

筆者の数年前に所属したベンチャー企業(20名ほど)で大手監査法人のショートレビュー(予備監査)を受けた際には、2か月ほど2~3人の公認会計士の先生に担当いただき、300万円くらいでした。企業規模にもよりますが、300万円~500万円程度の費用が必要になります。

まずは、自己の会社を客観的に知ることで、上場準備のためのスケジュールを立てやすくなります。
もちろん、結果によっては、上場のタイミングを延期することもあるかもしれません。

あまりにも、経営管理体制が白紙の状態でショートレビューを受けても、何もできてないという結果になり、お金も時間ももったいないので、上場準備責任者中心に社内的にある程度の人員体制・管理体制を整えた段階で受けるほうが望ましいでしょう。

 

(3)財務諸表監査対応(会計制度、経理体制の整備)

会計面の整備という側面では、以下のポイントが重要です。
どういう視点で考えるべきかというと、監査法人(つまり第三者)が監査すべき事項について、企業が監査を受けられる体制になっているかどうか?ということです。

経理担当者中心に、以下のような項目に関し、書類の保管管理、会計処理方針、そして資産管理体制を整理の上、監査法人によるショートレビューを受けた際に過不足や、管理レベルについて、ディスカッションするようにしてください。
・会計処理の根拠資料(契約書、請求書、領収書等)が検証可能な状態で保管されているか?
・保管されているとしても、網羅的に保管されているか?数字だけでなく、日付も正確か?
・会計処理をしたとしても、勘定科目の中に、不明な残高はないか?(その他、諸口、雑費など)
・現金主義ではなく、発生主義で会計処理しているか?
・実地棚卸を定期的に行っているか?
・在庫の払い出し、受け入れを正確に管理できているか?
・固定資産の管理体制など

 

この段階では、上場準備責任者とは別に、上記の実務を対応するために少なくとも1名~2名の経理担当者が必要になるでしょう。

 

(4)予算管理制度の準備

上場すると四半期ごとに決算をしなければなりません。また速報値は決算短信として開示の対象にもなりますし、その開示期限も決まっています。業績に変動が起これば、それも発生・決定の時点で開示の対象になります。

言い換えれば、予算管理をしっかりしなければ、適時適切な開示ができないということになります。
自社システムを持つようなよほどの大企業でない限り、予算管理のシートは、エクセルで作る会社が多いと思います。月次ベースでの予算を作成し、早い段階で経理の月次実績と突合し、予算と実績のかい離要因の把握(予実管理)が翌月の早い段階で、円滑にできるようにしてください。

また、予算は基本的には、大枠ではなく、事業や商品ごとに管理する必要があります。
筆者は、かつて、ベンチャー企業の経営企画室長として中途入社し、予算管理を導入した際に、経営陣が伸びていると思っていた海外事業が想像以上に大赤字なのを発見し、あわててコストダウンを図ったことがあります。

経営陣にも見えていないコストや思い込みを排するためにも、予算管理制度の早期の導入はお勧めします。

 

(5)関連当事者との取引の見直し、関係会社の整理

ここも、避けて通れない項目の一つです。上場前の段階ではオーナーの個人会社や、親族、知人などのとの取引が残っているのが通常です。
どうしても、取引の基本が信用である以上、上場前の信用がそこまで高くない段階の会社では、見知った先との取引が増えるのはやむを得ません。

しかし、原則としては、オーナーやその親族が代表を務める(資本関係のある)企業との取引は解消が求められます。取引の理由を記載して残すこともできますが、上場準備の段階で取引を解消しておくほうが、後々証券会社の引受審査や東証の審査でも執拗に突っ込まれることがなくなるので、余計な手間が減ります。

代表や役員を退任する、取引を解消する、会社を清算するなど方法はいくつもありますので、取引の解消は3年前から徐々に進めていきましょう。
上場をするということは、オーナー個人の私的企業から広く株主を募る社会的な側面のある企業に変わる
ということですから、ここは重要なポイントになります。

 

(6)資本構成

資本構成について、上場前の段階でイメージを持っておきましょう。

オーナー家や社員持ち株会の持ち分をいくらくらいにするのか? 安定株主として取引先に株式を持ってもらうのか? ベンチャーキャピタルなどの持ち分はどの程度か? などです。

資本構成については、別の機会に詳細を紹介したいと思いますが、
当初オーナー家は50%以上の持ち分を確保できるようにしておくべきでしょう。

先日、大塚家具のお家騒動でも話題になりましたが、役員の選任権など重要な議案の決定権を維持するためには過半数の議決権のある株式を保有している必要があります。

 

(7)内部統制とリスク管理

上記の整備のほかに余裕があれば、内部統制とリスク管理体制の整備を進めていってください。

社内関連規程を整備したり、マニュアル化を進めたり、フローチャートを作ったりという文書作成業務、
また、担当者と決裁者、けん制部門を分けたりする実態の組織づくりなどです。

これらは、直前々期には監査対象ですが、書類の整備だけではなく、運用レベルまで社内に定着させるのは意外と時間がかかるため、早期に書類自体はコツコツと整備を進めていくことが重要です。

まとめ

いかがだったでしょうか?こまごまとした上場準備の事項はいろいろとありますが、まず3年前から気にしておくべきことを中心に整理させていただきました。
上場準備全体としては、以下のようなサイトが参考になりますので、参照してみてください。
本記事をご覧になられた皆様の上場準備が順調に進んでいただければ幸いです。

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