M&Aの難しさ
突然ですが、皆さまは日本のM&A市場がどうなっているか、ご存知でしょうか?
日本企業による海外企業M&Aは2015年度で件数、金額共に過去最高を記録しています。2015年の日本企業による海外企業M&A合計額は11兆円強ですが、2016年はこれを超える勢いです。
活発に行われているM&Aですが、企業買収をした後の動向についてはあまり報じられていません。ある著名ビジネスコンサルタント曰く、海外企業を買収して結果的に成功した案件は全体の30%程度だそうです。
ではなぜ失敗するのでしょうか?良くあるパターンは、企業買収をする際に企業価値を見誤ることが指摘されています。デューデリジェンス(買収対象企業の実態を買収前に精査すること)を行っても、買収する企業の本当の価値を見極めるのは難しいのが実情です。
出典:itelligencegroup.com
最近の例として、LIXILを挙げます。LIXILが2014年に買収したJoyou AG社は、中国で衛生陶器等の製造・販売を行なっていました。しかし、LIXILが買収を行う際に粉飾して企業価値を上げていたことにより、約1年半後には倒産してしまいます。LIXILの損失額は660億円でした。
上場企業が十分な調査を行ってもこのような失敗例が起こってしまうことを考えると、スタートアップなどの非上場企業の企業価値を見極めるのは非常に難しいことだとわかります。
そこで、今回はこの問題を軽減するイスラエルの企業を紹介します。プライベートカンパニーの企業価値を試算する会社、それがZirra社です。
アルゴリズムとクラウド分析で企業価値を算出
出典:blog.zirra.com
テルアビブに拠点を置くZirra社。2014年に起業したスタートアップです。設立されて日の浅いZirra社ですが、経営陣は経験豊富な顔ぶれとなっています。
共同創業者のMOSHIT YAFFE氏は、イスラエルの上場企業のCEOの経験もあり、投資銀行で働いていたときから名を馳せていました。もう1人の共同創業者であるANER RAVON氏も様々な企業でプロダクト・マーケティングの指揮を取り、会社を発展させてきた実績があります。
Zirra社のサービスを一言で言うと、非上場のプライベートカンパニーの企業価値を機械的に算定するサービスです。特にスタートアップに投資をする場合、公開されている情報が限定的なため、企業価値を見誤るケースがあります。これを可能な限り防ぐため、人の感覚や企業イメージを排除して、客観的に価値を算出する方法をZirra社は考えだします。
独自のアルゴリズムエンジンとクラウド分析を駆使して、スタートアップなどの企業価値を算出します。これにより、本当の企業価値を明らかにするのがZirra社の特徴です。
投資銀行での経験から行き着いたZirra社
出典:venturebeat.com
YAFFE CEOが、このようなサービスを提供するようになったのは、彼女の長年の実体験が影響しています。投資銀行のCEOや自分で起業した投資会社でYAFFE CEOが痛感していたのは、プライベートカンパニーに投資する際の企業価値算出プロセスが非常にいい加減であることでした。
YAFFE CEOが“Broken process (壊れたプロセス)”と評する今までの企業価値算定プロセスは、デューディリジェンスと言えども、“友人が友人に企業情報を教えるレベル”とのこと。
これまで、情報公開義務の無いプライベートカンパニーの内情を調べるのは限界があり、どうしてもその企業に近い人物からのヒアリングに頼る傾向がありました。
Interdisciplinary Center Herzliya大学で学士の資格を得て幅広い知識を持っているYAFFE CEOは、企業価値算定プロセスにプロフェショナリズムと近代科学をもっと注入しようと考えます。そして行き着いたのが、Zirra社が提供するサービスです。
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起業して2年間を振り返りYAFFE CEOは、“クラウドはアナリストよりも賢い”ことが分かったとコメントしています。投資家に対し、より詳細で正確な情報を提供するプロフェッショナルでありたいとYAFFE CEOは信念を語っています。いずれは企業価値算定の分野だけではなく、他のエリアでプライベートカンパニーの情報提供を行いたいと抱負を述べています。
2016年10月、Zirra社はUS$160万(約1.6億円)の投資を受けることに成功します。その出資者の中には元マイクロソフト社の役員が2名含まれており、Zirra社の潜在能力の高さがわかります。
M&Aが世界的に活発になっていく中、Zirra社の動向に注目です。