人々の暮らしを変えた酒の宅配サービス
一昔前まで酒は近くの酒屋まで買いに行く以外、他の入手方法は余りありませんでした。これは酒類販売免許の交付に制限があり、酒屋が守られた業界であったからです。しかし今では規制が緩和され、スーパーやコンビニでも手軽にお酒が買えるようになっています。
しかし重い酒を持ちかえらないといけない負担は、常に消費者を悩ませていました。それを解消したのが、お酒の宅配サービスの誕生でした。日本だとカクヤスという企業がユーザーの支持を得ます。
しかしネットスーパーの普及などで、近年の年商は横ばいになっています。お酒の宅配サービスは、アメリカでも競争が激しいといわれていますが、今、ロサンゼルスで急成長しているスタートアップがいます。今回は2013年に創業したSaucey社をご紹介します。
始まりは日常の不便さから
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Saucey社の共同創業者の1人、Chris Vaughn氏はTextPlus社という無料コミュニケーションアプリ開発会社で働いていました。タフな一日を終え帰宅したVaughn氏は、リフレッシュするためにワインを開けようとしましたが、ストックが切れていました。店まで買いに行く体力がないVaughn氏は、ストレスを抱えたままワインを諦めました。
この体験からVaughn氏は、TextPlus社の同僚であるDaniel Leeb 氏とAndrew Zeck氏を誘い、Saucey社をロサンゼルスで立ち上げます。
どのような品物でもアプリで注文が出来る社会になっていたロスアンジェルスでは、先行する酒宅配サービス業者は幾つもありました。
そういった中、後発のSaucey社が市場で受け入れられるには、特色を出す必要がありました。
緻密な戦略
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Vaughn氏はまず、酒屋と配達ドライバーのネットワーク作りに力を入れます。Vaughn氏は酒屋と宅配するドライバーがいかに多くの報酬を得られるかを優先的に考えます。
そして次に、エンジニアのLeeb 氏とZeck氏が効率的なアプリ開発を目指します。当時を振り返りVaughn氏は、アプリ開発のノウハウを十分持っていた自分達ならば、注文をうけるだけの簡単なアプリならば直ぐに開発出来て、直ぐにもビジネスを開始出来たが、敢えて時間をかけてアプリ開発を行ったと語ります。
Saucey社のアプリは提携する酒屋の在庫を管理し、どこの酒屋から配送するのが一番効率的で早いかを緻密に計算します。これは委託するドライバーにも同じことが言えて、ドライバーの現在地から誰に依頼するかも瞬間的に計算することが可能です。
配達先に一番近い距離にある酒屋に一番近いドライバーが酒を取りに行き、配達するのが必ずしも最良の選択肢では無く、配達先、酒屋、ドライバーの位置関係と在庫状況を総合的に判断して、最速の組み合わせを選びだします。
Vaughn氏はSaucey社の強さの秘密を語ります。例えば複数の種類・本数のオーダーを受けた場合、1人のドライバーに拘らず、複数のドライバーと酒屋のコンビネーションで配達することもあると言います。
またユーザーからも支持を得ているシステムがあります。全ての商品がワンプライスな点です。日本では当たり前のことのように思えますが、チップ文化のアメリカではチップ込みのワンプライスは余りありません。
商品代金、配送料、チップ全てが含まれた価格がSaucey社の価格です。既存のサービスにひと手間かけたSaucey社のサービスは、ユーザーの支持を得て次第に認知されます。
ひと工夫が成功の秘訣
2015年にはUS$450万(約5億円)の資金調達に成功したSaucey社は、サンディエゴ、サンフランシスコ、シカゴにも営業エリアを広げました。
誰もが考え付く酒の宅配サービスですが、ユーザーのみならずステークホルダーのことを考えて工夫をすれば、後発でも成功出来る良いお手本がSaucey社です。今後のSaucey社のひと工夫に注目です。