顧客の声を聞くことが大切
市場が求めているのはどのような商品なのか?消費者が自社の商品をどのように思っているのか?ということを理解し、商品開発や販売戦略を行うことはB to Cの基本です。しかし、多くの企業は市場の変化や顧客のニーズについて把握するのに、手こずっているのが現状ではないでしょうか?
最近では市場のニーズや嗜好(しこう)の変化・動向を測定し、将来の市場規模やその特徴に影響をおよぼしそうなビジネス環境の変化を予測することで、市場分析を行う企業が増えています。
一方で、消費者が自社の商品についての評価については、アンケートという形で実情を把握することが一般的です。企業からの需要が増えたこともあり、アンケート調査会社の数は年々増えています。
また自分で手軽にアンケート調査を作成出来るツールやプラットフォームも、数多く提供されています。
このような今日に大きく貢献した人物がいます。オンラインアンケートのプラットフォームを提供するクアルトリクス社創業者のライアン・スミス氏をご紹介します。
起業のスタートは自宅のガレージから
出典:www.qualtrics.com
ユタ州で青年期を過ごしていたスミス氏は、ブリガムヤング大学のMBAコースで教鞭をとる父親が困っている姿を目の当たりにします。データを効率的に集めるシステムを探していた父親でしたが、授業で使いたいと思うソフトウェアのプラットフォームは何処を探しても売っておらず、スミス氏はそれを自分で作成しようと考えます。
大学教授の父親が満足するシステム且つ、MBAコースに参加する学生達が使いこなせるプラットフォームを作ることが目標となります。
スミス氏は、兄ジェラード、父スコットの協力を得て、比較的手軽にデータを集めるシステムを構築します。そしてこのシステムが、リサーチ業界に汎用出来ると考えます。
2002年にスタートアップを立ち上げたスミス氏は、その会社をクアルトリクス社(Qualtrics)と名付けます。それまでは市場リサーチは、リサーチャーというデータを集める人間達が、手作業でデータを集めていたのが主流でした。しかしスミス氏が開発したデータ収集のシステムを使えば、スピーディーに効率的にデータを集めることが可能になります。
当時を振り返りスミス氏は、市場リサーチ分野に対するニーズが高まることは誰の目に見ても明らかだったが、それをサポートするシステムを誰も構築していなかったので、この分野にはチャンスがあると確信していたとコメントしています。
消費者からの声を聞く場合、郵送で顧客にアンケートを取る古典的な方法に頼っていたリサーチ業界でしたが、スミス氏のシステムが普及するとインターネットを通じたアンケートにシフトして行きます。また教育・研究の分野でも、データ収集が著しく簡単になり、大きな貢献をしています。
ビジネススクールトップ100校の内、99校が使用するシステム
出典:www.qualtrics.com
スミス氏にとっては当然の結果かもしれませんが、彼が開発したシステムは至るところで使用されるようになります。現在では、クアルトリクス社の顧客は7000社を超えています。
フォーブス100社にリストアップされている半数以上の企業が、クアルトリクス社のシステムを採用していています。教育現場での浸透度はさらに進んでいて、世界中の1600校で使用されており、世界トップ100に名を連ねるビジネススクールの内、何と99校がクアルトリクス社のユーザーです。
実業界、教育界で欠かすことが出来なくなったクアルトリクス社の技術ですので、多くの投資家や大手IT企業から注目を集めます。現在ほど注目度が高くなかった過去、スミス氏はUS$5億(約600億円)の買収提案を受けましたが、それを断りUS$1億(約120億円)の出資を受けたこともあります。
クアルトリクス社は次の一手も考えています。ODO(オド)と名付けたオフィス効率化システムの開発です。これはオフィスにいる社員達のコミュニケーションを円滑にするシステムで、社員達が自分の仕事内容を記録し、別の社員がその記録を閲覧できるシステムです。
さらにODOをインストールしたパソコンは、そのフロア全体が見渡せる監視カメラにアクセス出来る仕組みになっています。誰が何処で何をしているのか、自分のデスクで簡単にチェック出来ます。
自分の本能を信じろ
出典:www.youtube.com
メディアの前にはフード付きのセーターにベースボールキャップ姿で現れることが多いスミス氏のスタイルは、創業当初から変わりません。
現在では総資産US$3億(約360億円)と言われているスミス氏は、フォーブス誌が発表している“40歳以下のアントレプレナー総資産額ランキング”で37位にランクされています。
以前インタビューで、“18歳の自分にアドバイスするとしたら何を言うか?”と問われたスミス氏は、“自分の本能を信じて、雑音には耳を傾けず、道のりの長いゲームをするつもりで働け”と答えています。
まさにそれを実行しているスミス氏の今後に注目です。