Contents
リーダーシップとは、目的を示すリーダーたること
リーダーシップとは、自身のミッションやビジョンを部下に示し、人が動きたくなる環境をつくることです。最新のリーダーシップ論では、人を従わせるかつてのリーダーシップは否定されつつあります。
実は、この最新のリーダーシップ論は、脳の構造から見ても正しく、あのスティーブジョブズ氏のプレゼンと全く同じ構造を取っているのです。果たしてどういうことなのでしょうか。
この記事では、最初に最近話題のリーダーシップの本質や理論を端的に示します。次にスティーブジョブズ氏やドラッカー氏等の偉人のリーダーシップの例を見ていきましょう。
リーダーが学ぶべき、行動科学の重要な考え方をお伝えします。
リーダーシップ論を考えてみる
出典: http://hipstergate.jp/glossary/2821/
リーダーシップ論には多くのものがありますが、実は3段階で語ることができます。この概念を最初に形式化しようと試みたのは、ダグラス・マグレガー氏という人物です。彼の考えを応用して、リーダーシップを3段階で簡潔に示したいと思います。
1段階目: 人を動かすリーダー(命令型)
2段階目: 人に動いてもらうリーダー
3段階目: 人が動きたくなるリーダー(自己型)
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/スティーブ・ジョブズ#/media/File:Steve_Jobs_WWDC07.jpg
リーダーは必ずこのうちのいずれかに属しており、「人が動きたくなるリーダー」が理想的と言えます。この3段階目のリーダーシップこそが、最近話題となりつつある、サーバントリーダーシップに近しい概念です。
Appleのスティーブジョブズ氏が生み出したiPhoneは、多くの人々が自然と購入欲求にかられました。つまり、3段階目のリーダーシップと同様に、受け手側が行動していきます。
次の章では、先ほどご紹介したダグラス・マグレガー氏による、リーダーシップに関する有名な理論をご紹介したいと思います。
リーダーシップ論を最良の経営手法で制す
ダグラス・マグレガー氏は、経営学者であり、心理学者でもあります。彼が提示した理論は、心理学を元にした経営手法であり、リーダーシップに応用することができます。
具体的には、マズローの欲求5段階説を利用し、リーダーは目標の提示こそが大事であるという理論(行動科学)です。
これがマズローの欲求5段階説の図です。
ダグラス・マグレガー氏は低次欲求を元にした行動をX理論、高次欲求を元にした行動をY理論と命名します。それぞれの理論の持ち主は以下のような特徴があります。
X理論
出典: https://www.pakutaso.com/20150302070fx.html
⑴普通の人間は仕事が嫌いで、怠けたい
⑵強制されたり脅されたりしなければきちんと働かない
⑶あまり野心を持たず、何よりもまず安心を望んでいる
Y理論
出典: http://menzine.jp/archive/girigirimade3791/
⑴普通の人間は自ら責任を引き受けようとする
⑵自分で定めた目標のためには自らにムチ打ち働く
⑶課題解決のために創意工夫する能力は、たいていの人間に備わっている
ダグラス・マグレガー氏は、リーダーシップを発揮すべき経営手法において、X理論を批判し、Y理論にこそ価値があるとします。
つまり、リーダーが目標や夢というWhyをメンバーに生み出すことができれば、基本的にメンバーは行動するようになるということです。
この考え方の構造は、いろいろな場面で利用されています。
では次に全く異なったものに見える、Appleのスティーブジョブズ氏のプレゼンの例を考えていきましょう。
行動科学の分野で考えてしまえば、ジョブズ氏のプレゼンの構造が、リーダーシップと関係してくることをご理解していただけると思います。
真のリーダーシップを示したAppleのプレゼン
出典: http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/IDG/20140609/562544/
Appleのゴールデンサークルという言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
これは、Appleの創業者であるスティーブジョブズ氏のプレゼンで用いられていた手法であり、多くの人が心動かされました。スティーブジョブズ氏は、人が動きたくなるリーダーの代表格です。
彼のプレゼンにより、顧客は商品の購入欲求が高まりました。未だに根強いファンがいるのはこのためです。
⑴What→How→Whyと表現する人が多数を占める中で、ジョブズ氏は、⑵Why→How→Whatと表現したのです。これにより、人々は自らの意思で動きました。
まずは実際に例を見てみましょう。
出典: http://www.rich.co.jp/blog/members/15060901
⑴What→How→Whyの場合
このiPhoneは、色鮮やかなディスプレイと鮮明なカメラを搭載しています。このiPhoneで皆様の思い出を残し、生活になくてはならないものとなること。これが我々の使命です。
⑵Why→How→Whatの場合
我々の使命は、皆様の生活を劇的に変える、唯一無二な存在となることです。かけがえのない日々を皆様と共有できる、生活になくてはならないものとなるために、大切な思い出を色鮮やかに残す必要があると考えました。そのために我々は、今までよりもより鮮明で新しい機能を備えたカメラ、そして、他に類がないほど美しいディスプレイを搭載したのです。これが今までにない全く新しいiPhoneなのです。
直感的に⑵の方に何かしら感情が動かされたと思います。
Whyを明確に伝えることで、Whatという具体的部分、この場合ではカメラの性能やディスプレイ、さらにiPhoneに興味関心が湧きました。
Whyこそが、人が動く真の要因であり、現在求められているリーダーシップの本質です。
出典: https://www.ted.com/talks/simon_sinek_how_great_leaders_inspire_action?language=ja
この感情の動きはリーダーシップに応用することが可能であり、チームのメンバーが自然と仕事をするように少しずつ変化していきます。
仕事レベルに落とし込むと、Why: 目的、What: (実際の)業務、となります。
リーダーは最初に、Why: 目的を明確に伝え、What: 業務、というタスクを行う価値を伝えていく。
メンバー自体のレベルが高いことが前提ですが、メンバーに目的を与えることで、メンバーが少しずつ動くようになります。
現在求められてるリーダーシップというのは、目的を与えるリーダーシップであると言えるでしょう。
ドラッカーから学ぶ、リーダーに才能やカリスマ性は必要ない
出典: http://www.akutsuzeimu.jp/blog/2010/10/post-60.html
経営学の父と呼ばれるピーター・ドラッカーは、リーダーシップにカリスマ性は必要なく、大事なのは、組織のミッションを考え抜き、それを目に見える形で明確に定義することだと述べています。つまり、Whyの部分です。
『重要なのはカリスマ性ではない。…リーダーが最初に行うべきは、自らの組織のミッションを考え抜き、定義することである。』非営利組織の経営(ドラッカー著書)
成功した経営者に備わったリーダーシップは、先天的なものではありません。優れたリーダーたちは、多くの失敗の中で身に付けていきました。
最新のリーダーシップ論を経営学的に再定義すると?
出典: https://www.business-on-it.com
リーダーシップを経営学的に定義してみたいと思います。
業務を商品を考え、その業務に対する部下の仕事の好き嫌いをニーズと捉えます。すると、以下のようにリーダーシップは再定義できます。
1段階目: 人を動かすリーダー: ニーズを無視して部下に商品を売りつける
2段階目: 人に動いてもらうリーダー: ニーズに沿って部下に商品を提供する
3段階目: 人が動きたくなるリーダー: ニーズを生み出し、部下が商品を買いたくなる
このようにリーターシップを見ていくと、最近話題の新しいリーダーシップの考え方がとても簡単にご理解いただけるのではないでしょうか。
リーダーは、仕事という商品を部下が買いたくなるように、ニーズを生み出していく必要があります。
そのニーズこそが、つまりはWhy、目的です。
リーダーシップのタイプとは?
出典:bearingdrift.com
リーダーシップのタイプは1つではありません。
リーダーシップ研究としては、アイオワ実験(リーダーシップ行動論)があります。研究者のレビンによってアイオワ大学で行われました。
以下で、リーダーシップの3つのタイプについて見ていきたいと思います。
専制的(独裁的)リーダーシップ
あらゆる決定権限をリーダー自身が握り、一方的に支持命令を行っていくタイプです。
ここでは、リーダーはメンバーを受け身で消極的なものと考えています。
このタイプは短期的には高い成果を得られますが、長期的には組織構成員の反感が増して、成果が下がってしまいます。
出典:www.americanexpress.com
自由放任的リーダーシップ
メンバーの行動に関与せず、自由に行動させるタイプのリーダーシップです。
このタイプのリーダーシップでは、組織にまとまりが生まれないため、生産性も上がりません。
民主的(参加的)リーダーシップ
決定に至るまでの過程にメンバーを参加させ、最終決定権限と責任はリーダーがとるというタイプです。
メンバーの創造性や理解が深まり、一体感が生まれます。
これらのことから、自由放任的なリーダーシップは組織を崩壊させてしまう恐れがあるため、あまり取らない方が良いと思われます。
専制的リーダーシップや民主的リーダーシップについては、短期的に結果を出すのか長期的に結果を出すのかといった点で、向き不向きがありますので、その都度どういう方針でやっていくのかを検討する必要があります。
部下に慕われるリーダーになるには?
出典:www.oncallinternational.com
部下に関わらず、あらゆる人を巻き込む力を持つリーダーが共通して持っているもの、それは「信頼」です。
そこで、信頼を得るために欠かせない5つのポイントをまとめています。
一貫性がある
思っている事、言っている事、やっている事が一致していることが重要です。
言っていたことと違うことをしている、人には言うのに自分はできていない...そういったリーダーでは、もちろん信頼を得ることは難しくなってきます。
周りを見る力がある
ただ要望を伝えるだけではなく、周りの状況を見る、聞くなどした上でそれが可能かどうかを考えて命令していくことが大事です。
周りを見ずに発言してしまうと「そんな無茶な!」「理不尽だ!」と反感を買ってしまいます。
最後に技術や経験、知識など、いずれかの面で秀でた専門家であるということです。
知識や経験が豊富
日々自己革新を行い、勉強を絶やさない人です。
自己成長意欲の高い上司を見て、自分も頑張ろうと刺激を受ける部下は大勢いるはずです。
出典:www.elainerumboll.com
人間的な魅力がある
仕事に没頭し、日々成長を目指している人も魅力的ではありますが、それだけではいわゆる”つまらない”人間になってしまう恐れもあります。
仕事に関わることだけではなく、「好奇心」に従って様々なことにチャレンジしていくことが、人間的な魅力をさらに高めていきます。
リスクを恐れない
リーダーともなれば責任は大きくなるので、その分リスクも大きくなります。
リーダーたるもの、そういった状況を恐れずに、自分で変革していく力が必要になります。
率先して変化に対応し、変化を起こしていく姿勢を見て、周りの人たちは信頼や尊敬の念を抱くのです。
なんとかして部下から信頼を得たいと考えている方は、日経Bizアカデミーに部下から信頼を得るための行動チェックリストがありますので、ぜひ確認してみてください。
リーダーシップとは何か
いかがでしたか?
みなさんはリーダーシップについて正しく理解していたでしょうか。
今回の、リーダーシップの3つの種類や、信頼されるためのポイントを確認し、ぜひ明日から実行してみてください。