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アップル社も取り入れる“ファブレス”
出典:www.apple.com
日本は製造業を筆頭とする技術立国、世界的にも優れた評価を受ける私たちが持つ“技術力”は、“工場”なしでは成り立ちません。しかし、今シリコンバレー発のIT企業を中心に、半導体、ゲーム、飲料やアパレル等では今“ファブレス”がスタンダードになりつつあります。
例えば2016年秋、アップル社によるiPhoneの部品を供給した日本企業は865社にも上り、それらの企業への支払い額が3兆円を超えたことが発表されました。今回は“ファブレス”について説明します。
シリコンバレー発“ファブレス”な企業とは
“ファブレス(fabless)”とは、ファブ(fabrication facility=工場)とレス(less=ない)が組み合わさった言葉の略語で、言葉の通り企業における“工場を持たない”運営形態を指します。
特に、工場を持たない製造業を“ファブレス”企業と呼びます。このようなファブレス企業はシリコンバレー発の半導体ベンチャー企業に多く、近年は半導体関連会社を超えて広い業界で採用されています。
企業が“ファブレス”を選んだ理由
自社工場を持つことができればそれがベストな形ではありますが、半導体をはじめとした日々技術が向上していくTEC業界やトレンドの移り変わりが激しい業界では、設備投資やそれを維持するための費用を捻出し続けるのは至難の業です。
そのような分野の企業では生産をアウトソーシングに切り替えることで、企画、開発や販売に集中することができるのです。
ファブレス企業の生産委託を担う“ファウンドリ”
出典:www.gratisography.com
工場を持たない企業が“ファブレス”と呼ばれる一方で、その生産を引き受ける企業は“ファウンドリ(foundry)”と呼ばれます。特に半導体関連企業で実際に生産まで行っている工場のことを指し、他社の製品の委託生産を行っている企業形態も“ファウンドリ”企業と呼ばれています。
半導体の工場を作るためには数千億円規模の設備投資が必要だったことから、ファブレス企業やファウンドリ企業という分化が進み、生産技術の向上から最近は委託・生産のみを行う企業も増えています。
身近にあるファブレス企業・ファウンドリ企業
出典:www.nintendo.co.jp
ファブレス企業やファウンドリ企業は、実は私たちの身近にもたくさんあります。特に有名なのは、日本が世界に誇るゲーム会社・任天堂です。ゲームという特殊な製品の生産工場をあえて持たないことで、純粋にソフトの開発のみに力を注げているのです。
また、至る所で自販機を見かけるダイドードリンコもそんなファブレス企業の一つです。頻繁に新しい製品が登場する清涼飲料業界でも、生産工場を持たないことで販売に力を入れることができ、自販機の台数や販売数を順調に伸ばしている企業なのです。
ファウンドリ企業で有名なのが、半導体製造を代表する台湾のTSMCです。半導体の世界的シェアの半分以上を占めるファウンドリ企業であり、アップル社のiPhoneやiPadを生産している企業としても知られています。
企業はこれからファブレス化するか
アパレル業界もファブレス化が顕著な業界です。ハイブランドの生産も手掛ける“ファクトリーブランド”の洋服や小物を身につけられたことがある方も多いのではないでしょうか。ファブレス企業は、その品質管理の難しさや情報漏洩というリスクと隣り合わせでもあります。
しかし、成熟した消費者が多く集まる欧米やアジアの顧客を相手とする業界や企業では、今後ますますより質の高い企画・開発が求められており、ファブレス・ファウンドリという企業形態が今後も増えていくことが予想されます。