起業する場合、学生から起業したり、親の事業を承継しながら起業する人など色々な状況の方がいるでしょう。
今回は、その中でもサラリーマンを辞めて起業しようとする、いわゆる脱サラ起業の際に「失業保険が使えるのか」「どういう助成金が使えるのか」といった、脱サラ起業家がおさえておかねばならない基本的な注意点について、紹介したいと思います。
1.脱サラと退職手続き時の必要書類と離職票の記載の確認
脱サラ起業家というのは、自己都合退職で会社に退職届を提出して辞め、起業をしようとしている人のことを指します。
その際、まずは、会社から受領した書類で以下の書類がそろっているか、確認ください。
離職票:失業保険の申請手続きに必要。
雇用(失業)保険被保険者証:次の会社で必要。起業する場合は保管
健康保険資格喪失証明書:健康保険の切り替えに必要。
源泉徴収票:税金を確定申告したり、起業した会社で年末調整する場合は必要。
年金手帳:会社が預かっていないケースもあり。
大事なのは会社が作成する離職票です。その退職理由の記載には注意してください。
通常は自己都合退職の場合、「一身上の都合」と記載されている場合がほとんどですが、「起業するから退職する」と高らかに周りの人に宣言して辞めた場合に、人事の担当者が、良かれと思って「起業のため」などと記載したりすると、後々の失業保険の受給に影響したりします。
また、本記事では詳細を割愛しますが、脱サラ起業の場合、社会保険は任意継続するか、国民年金に切り替えるか、家族の扶養に入るのか、というのもあわせて検討が必要です。
2.起業する際に失業給付は受けられるのか?
以前は、「自営を開始または自営の準備に専念する人」は厚生労働省の通達で給付の対象外とされ、失業給付を受けることが禁じられていました。
そのため、本当は起業するつもりなのに、ハローワークで就職活動をしているフリをし、失業給付を不正に受給する人もいたようです。
しかし、政府は成長戦略で起業率を現状の2倍の10%に高める目標をかかげており、厚生労働省もその方針にそって、失業給付にかかる通達を脱サラ起業者に有利に見直しました。
具体的には、2014年7月22日に厚生労働省が出した「求職活動中に創業の準備・検討をする場合」を給付対象にするとの通達です。
※長いですが、興味のある方は下記の厚生労働省の通達を参照ください。
www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000.../0000044468.pdf
そのため、今後は「事業許可の申請をしている」「事務所を借りる家賃交渉を始めた」といった、起業の準備段階なら自営業者とみなさず、失業手当が支払われることが正面から認められました。
ただし、単に起業を準備しているだけではなく、「並行して求職活動もする」ことが給付の条件となります。
そのため、みなさんの場合、起業準備をしながら、他の求職者と同じようにハローワークに行ったり、求職票を書いたりする必要があります。
また、失業手当の給付は最長で1年間であり、あくまで準備期間中の給付なので、会社を設立すると起業準備を終えたとみなして、給付を打ち切られます。
したがって、脱サラ起業の場合は、会社設立を急いで先行させず、事務所や店舗の開設準備、経理周りの整備、OA環境の充実、営業活動など、専門家と相談しながら起業準備を会社設立より先に入念に行ったほうがよいでしょう。
また、そもそも自己都合退職での失業給付は、原則として3か月の待期期間(失業給付をがもらえるまでの猶予期間)があります。
退職してすぐに失業給付がもらえるようになるわけではないことも、あわせてご注意ください。
3.脱サラした際の助成金・補助金
以前は、脱サラ組の創業支援の助成金として、使い勝手の良い「受給資格者創業支援助成金」というものが存在しましたが、現在はありません。
脱サラ組が利用しやすい、一般的な創業支援の助成金や補助金は現在目ぼしいものがあまりなく、脱サラ組が起業しやすい助成金が整備されていくのはこれからになると思われます。
しかしながら一方で、自治体ごとのさまざまな助成金・補助金の支援は強化される傾向になっていますので、創業するエリアや、業種、個別の設備や店舗に関するものなど、目的に応じた助成金・補助金を活用しましょう。
たとえば、大阪エリアであれば以下のようなものが活用対象です。
http://tsunagu.tri-osaka.jp/hojyokin.html
助成金・補助金に関しては、細やかになる一方で一般の人にわかりづらい状況になってきています。
そのため、このあたりは失業給付を受けながら専門家の方と相談し、二人三脚で情報収集と起業準備を進めていただけたらと思います。
いかがでしたか?
脱サラ起業を目指す皆さんが、周到に準備をして、起業を成功させる一助になれれば幸いです。