人口水晶から生まれる新しいエネルギーを求めて
2015年11月、COP21でのパリ協定締結は、日本でも大変話題になりました。変動する地球の気候や二酸化炭素ビジネスは、私たちの想像を超え、ますます加速していくことが考えられます。
そんな私たちの最も身近にある“エコビジネス”と言えば、ソーラーパネルではないでしょうか?家屋の屋根や空いている土地、ビルの屋上など、様々な場所に設置されている風景をよく見かけます。
今回はそんな太陽光パネルへの活用も見込まれている、人工水晶から光発電素子を開発した会社、inQs株式会社をご紹介します。
世界初・人口水晶を使った新型太陽電池
出典:www.inqs.co.jp
2016年4月、inQsは伊藤忠商事と三菱UFJ信託銀行から出資を受けたことを発表しました。
日本を代表する大手商社や金融機関から出資を受けたinQsによって開発されたのは、世界で始めての人口水晶を原料に使用した新型太陽電池です。完全無色透明型と極低照度発電型の2種類があります。
出典:www.inqs.co.jp
完全無色透明型は、ガラスのように使用でき、オフィスビル、商業ビルや車にも活用することができます。これまでスペースの面で断念していた狭い場所でも、ガラス代わりに使えることで普及の加速が見込まれる画期的な太陽光電池です。
極低照度発電型は、少しの太陽の光でも発電することができるので、例えばスマートフォンや電池の中でも充電なしで電力を作ることが可能になるのでは、と期待されています。
エコ精神から生まれたinQs株式会社
出典:www.inqs.co.jp
世界中から注目されているinQsを率いるのは伊藤朋子氏です。伊藤氏は慶應義塾大学理工学部卒業後、商社勤務を経て、国際先端技術総合研究所にて技術開発を行っていました。
研究を行う中で光発電素子の起因となる特別な材料を発見したことをきっかけに、2011年にinQsの前身でもあるIFTL-Solar株式会社を設立、取締役に就任され、現在は代表取締役社長に就任しています。
研究・技術畑からの起業はまだまだ日本では少ないのが現状です。そんな研究室発のinQs株式会社が生まれた背景には、伊藤氏の“エコ”な精神がありました。
出典:j-venture.smrj.go.jp
彼女は大学時代、電力の半分以上が失われる電力ロスや送電ロスを知りました。また、廃材の再利用を目指す中で生まれた全く新しい形の太陽電池は「ムダをなくし、とことん使い切りたい」という伊藤氏自身の考え方を如実に表していました。
研究者出身の伊藤氏の「価格が高いもの、コストがかかるもの、CO2がたくさん出るものを作るようでは、ビジネスとして成功しないだろう」という独特のエコなビジネスマインドも、“EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー 2016 ジャパン”受賞にも繋がったのではないのではないでしょうか。
新しい太陽エネルギーが生み出すもの
inQsによって生まれた新しい形の太陽光電池は、今私たちが当たり前のように使っている電力供給システムの一部を変える可能性を秘めています。車や建物はもちろん、IoT産業に欠かせないセンサーデバイスへの使用が大手企業によって検討されているのです。
たくさんのモノが溢れる現代社会、常に当たり前を疑い現状を変えていこうというアントレプレナーシップこそが、これから始まるエコビジネスの発展にも貢献していくのかもしれません。