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CSVとは?
CSVとは、Creating Shared Value の略称のことで、「共通価値の創造」と訳されます。企業が社会課題等に主体的に取り組み、社会に対して価値を創造することで、経済的な価値がともに創造されることを意味します。このCSVは、マイケル・ポーター教授がハーバード・ビジネス・レビューで提唱した考え方です。
今回の記事では、このCSVと従来の企業が社会に対する考え方であるCSRとの違い、そしてCSVを実際に導入している事例を厳選して紹介していきます。
CSVとCSRとの違い
CSVという言葉が流行する前は、CSRという考え方が企業にとって基本となっていました。CSRとは、Corporate Social Responsibility の略称のことで、「企業の社会的責任」と訳されます。
CSRとCSVの違いは、提唱者のマイケル・ポーターによると「事業との相関性」にあります。CSRは企業の事業とは全く関係ない活動に対しても当てはまるのに対し、CSVは企業の事業領域に関連性を持つことのできる活動であると言えます。
このCSRとCSVの違いはしっかりと押さえておきましょう。
なぜなら企業の取り組み方が全く変わってくるからです。
CSRは、本業とは関係のない取り組みで、経営基盤を維持するための行動になります。
いわば「コスト」なのです。
対してCSVはその活動自体を本業に据えています。
CSV活動自体が競争の源泉であり、利益追求の対象であり、そのために企業全体が動くのです。
CSRが一つの部署の担当であるのに対し、CSVは企業全体の目的になります。
どうでしょうか?
CSVがCSRよりも、より積極的なものであることが理解できたでしょうか。
その結果、CSRでは固定的・停滞的な活動になりがちだったものが、CSV導入企業のもとではよりクリエイティブな改善策を実施する傾向にあります。
ここからは、具体的なCSVの事例を見ていきましょう。
CSVの代表的な事例3選
①伊藤園 茶産地育成事業
伊藤園は日本の緑茶飲料市場の約35%を占める大手飲料メーカーです。そんな伊藤園はCSV活動として、「緑茶の原料である茶葉を、安定的にかつ高品質で仕入れるための自社目的」と「農家の教育と安定的な収入の確保の社会的課題解決」の2つを取り入れた茶産地育成事業を行っています。
具体的には、茶葉農家と伊藤園が契約し、伊藤園のための茶葉を生産してもらう代わりに全ての茶葉を購入するという施策を実施しています。伊藤園は茶葉の仕入れが安定し、同様に農家の収入も安定するためWinWinなビジネスモデルとなっています。
②ネスレ
CSVに早くから取り組んでいる企業が、コーヒーメーカーのネスレです。
このようにHPでも大きく掲げています。ネスレは、共通価値の創造を「栄養、水、農村開発」と自社定義し、活動をしています。
具体的には、健康的な食生活と、運動も含めた健康的な生活習慣主要指標の2015年のパフォーマンスを推進するための「ネスレ ヘルシーキッズ プログラム」を84ヵ国で実施しているようです。
2015年成果報告によると、乳業工場を現地の地下水を使わずに操業する取水量ゼロ技術により、グローバル・ウォーター・アワードの企業ウォーター・スチュワードシップ・アワードを受賞しています。
また、カカオやバニラ、ヘーゼルナッツなどの主要なカテゴリーにおける児童労働の根絶に引き続き取り組み、47,962の農業従事者に研修を実施。42の学校を建設・改修し、児童労働モニタリングと改善要請システムの適用対象となるコートジボワールのカカオ農業協同組合の割合を50%に拡大しています。
社会的貢献度の高い企業と言えますね。
③キリン CSV商品として売り出した新氷結
出典:www.kirin.co.jp
飲料メーカーのKIRINは東日本大震災の復興支援のため、2013年、2015年に福島産の桃と梨を使用した氷結を発売しています。先ほどの伊藤園やネスレと同じように、飲料メーカーはCSV活動がしやすい事業と言えそうです。
CSV活動はこれからの企業の当たり前となるのか
これからの企業活動において、大切になってくるCSVの基本的な考え方について紹介してきました。
共通価値の創造は、企業が利益を出しながら社会に貢献していくという考え方です。企業が社会にどのように貢献しているか、それは企業のブランドイメージにも繋がっていきます。
これはベンチャーにとっても非常に重要です。なぜなら、ベンチャーはこれから事業を伸ばしていく過程で、多くの協力者・ファンを作っていかないといけません。そこで、社会貢献性があること、なおかつ事業の成長に寄与する行動は、投資家やユーザーが見ているからです。
CSRというコスト的考え方ではなく、CSVという社会的利益・経済的利益の双方を追求する考え方。
取り入れていきましょう。