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知的財産権とは?
そもそも知的財産権とは、「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利」のことを言います。(知的財産基本法第2条)
平たく言うと、不動産などと違い、目に見えない技術や営業に有用な権利です。みなさんも、特許権、著作権、商標権などの名前自体は聞いたことがあると思います。
サムソンとアップルの特許訴訟、青色発光ダイオード訴訟、オリンピックのロゴの問題、鳥貴族のマークの問題など、世間を賑わせたニュースとして、記憶に新しいのではないでしょうか?
出典:articles.economictimes.indiatimes.com
企業を経営する人にとって、知的財産権は最も意識しなければならないテーマです。なぜなら、これらの権利を無視すると、事業を継続することが困難になってしまう恐れがあるからです。
そこで今回は、経営者(特にベンチャー)が知っておくべき知的財産権について、3つのことがらについて解説します。
知的財産権の評価方法
評価方法は一般的には、マーケットアプローチ、コストアプローチ、インカムアプローチの3つです。
M&Aとは?経営者なら知っておきたい成功のための心得の記事で紹介した株式評価と似ていますが、同じ考え方です。
ここでは各評価方法について詳しくは記載しませんが、マーケットアプローチは市場において第三者間で合理的に取引された価格をベースに決定します。市場がない場合は、価格を決めにくいのがデメリットです。
コストアプローチは、実際にその知的財産権を生み出すために要した開発コストや人件費、その他の諸費用をベースに評価するものです。
ただし、総コストとその知的財産権の価値は必ずしも同一ではないので、算出はしやすいですが、少し納得しにくい方法だと言えます。
インカムアプローチは、知的財産権がその使用期間内において寄与する正味の経済的価値をベースに算出する方法です。
しかし、販売力のある大企業の特許とベンチャーの特許では必ずしも寄与する経済価値が同一軸で語れないこと、また、企業防衛のための特許など、実際にキャッシュフローを生まない知的財産について、どのように評価するかなど、課題が残されています。
知的財産を利用した資金調達
知的財産の評価方法について、基本的な考え方は以上のとおりです。
では、ベンチャー経営者として、かかる知的財産権をどのように活用していけばいいのでしょうか?
1つ目は、融資やファイナンスといった資金調達に知的財産を利用できないかを検討することです。
(a)知的財産担保融資
現在中小企業向けに「知的財産担保融資」というものを経済産業省や特許庁がバックアップして、進めています。不動産だけでなく、文字通り知的財産を担保に融資をする制度です。
例えば、以下の地銀ではすでに融資を開始しており、今後ノウハウが蓄積されれば、その他の地方銀行、信金等でも展開されていくでしょう。
メインバンクに知的財産担保融資があるかどうかは、創業中、またはこれから創業するベンチャー経営者は要チェックです。
また、詳細は経済産業省のHPを参照ください。
(b)ベンチャーキャピタル、投資ファンド
ベンチャーキャピタルでも以下のようなところは知財特化型で投資をしています。
他にも、官民連携で設立された、株式会社産業革新機構も知財ファンドを組成し、積極的に知財への投資を図っています。
自社の知的財産権を中心にした事業展開をお考えのベンチャー経営者の方は、このような資金調達候補先を頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
(c)特許オークション
また、米Ocean Tomo, LLCでは「特許オークション」なるものを主宰しており、特許等の知的財産権自体を売却することができます。
ライセンス契約の活用
ベンチャー企業における知的財産を活用した事業戦略として、もう1つはライセンス契約という手段があります。
例えば、みなさんの知的財産を製造メーカーやソフトウェア開発会社にライセンス供与し、商品の生産台数やサービスの利用台数に応じてロイヤリティを得たり、自社で商品自体を製造できるのであれば、販売代理店から販売数に応じたロイヤリティをもらうという方法があります。
筆者も、シリコンバレーでいくつかの代理店に自社のソフトウェアのライセンスを供与し、海外での販売促進をしたことがありますが、アメリカは日本と比べ個人事業主を含む代理店制度が発達している印象があり、非常に多くの代理店希望に驚いた記憶があります。
知的財産権まとめ
資金調達の候補先の選定、第三者と組んでライセンス契約等を締結する事業展開のいずれの場合であっても、上記のような基本事項を理解した上で、ベンチャー経営者として、成功確率の高そうな方法を選択できると思います。
その際は、自社の知的財産権を正しく評価し、その活用方法について適切なアドバイスを受けることが必要です。しかしながら、こと知的財産の分野はそのような専門家は限られています。
これらは、弁理士や弁護士、公認会計士、知財コンサルタントなどの交わる分野になる上、バイオや電気など、その専門技術内容によって守備範囲が異なるからです。
知財立国を目指す日本ではこれから発展成長していく分野ですので、この記事を読んだベンチャー企業の経営者のみなさんが、そのような時流に乗って事業を拡大成長させていくことを願っています。