6月27日(米国時間)、Amazon(以下、アマゾン)が教師向けにデジタル教育リソースを無料で提供するサービス「Amazon Inspire」を発表した。利用者はK-12(幼稚園から高校3年生まで)を対象とした教材を入手することができる。現在はベータ版であり、まずはアメリカからサービスを展開していく模様。
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「Amazon Inspire」ローンチの背景
出典:www.amazoninspire.com
アマゾンがオンライン教育の分野に本格参入しそうです。アマゾンはかねてからこの領域に進出することを考えていて、2013年にはオンライン数学教育のTenMarksを買収しています。
日本でも、教材共有サイト「Curriki(カリキ)」があったり(ただし小・中学校の算数・数学)、教材だけでなく教師同士がオンラインで情報交換できるサービス「SENSEI NOTE」もあります。このように、近年、教育の現場はデジタル化が進んでいるようです。
一方で、教師たちの情報収集の手段がアナログであったり、バラエティに富んだ教材の共有サイトが少ない(あったとしても有料)という問題もあるようで、アマゾンK-12 Education部門のジェネラルマネジャーRohit Agarwal氏は「学校の教師は、教材探しに週12時間以上費やしています。・・・中略・・・我々は良質なデジタルリソースを簡単かつ早く入手できるようにし、彼らの貴重な時間を本来の教育に充ててほしいのです」と話しています。
「Amazon Inspire」の特徴
出典:www.amazoninspire.com
Amazon Inspireはどういった特徴があるのでしょうか。プレスリリースには5点まとめてありました。
1.Smart Search
フィルター検索機能がついていて、10個以上の項目を使い分けることで、自分のニーズに合った教材を見つけることができます。
2.Collections
見つけた教材をグループ化することができます。そうすることで、他の先生とシェアすることも可能です。
3.Simple upload
シェアしたいファイルをドラッグ&ドロップするだけで、アップロードできます。
4.Customer reviews
利用者は教材を評価でき、他人が書いたレビューを見ることができます。
5.Accessibility support
直感的なインターフェイスだけでなく、スクリーンリーダーを使って、操作のサポートをしてくれます。
アマゾンはなぜ無料で教材プラットフォームを提供しているのか
出典:www.amazoninspire.com
有償のプラットフォームではなく、無償で提供する理由は何なのでしょうか。
eコマ―ズで絶対的な地位を築いたアマゾンが、教育分野に進出することを嫌がる存在に配慮している可能性もあります。特に公的機関の関与が大きい領域なので、営利を前面に出して事業を展開することは、あまり好ましくないのかもしれません。
しかし、そうはいってもやはり営利企業なので、ビジネスに繋がらないことは行いません。無料にすることで公的機関との連携を進め、サービスを一層浸透させてから、その後の展開を考えているのではないかと考えられます。
マネタイズとしては、例えば、デジタルコンテンツ・eBookを扱う「Amazon Whispercast」での物販への送客。もっと中長期的に考えると、フリーミアムモデル(基本サービスを無料、一部有料の収益モデル)のように、無料ユーザーをまず大量に確保し、その後収益化を図ることも可能でしょう。
こういった取り組みの背景には、アマゾンの業績が好調で、教材プラットフォームで赤字であっても、本体には全く痛手にならない、という事実があることを忘れてはいけません。安定したマネタイズポイントがあっての新規事業、ということです(アマゾンの第一四半期の決算はコチラ)。
まだローンチしたばかりで、真相は定かではありません。アマゾンの今後の展開に注目しましょう。