過去の経験から、それに関する事業を立ち上げる方がいます。
以下でご紹介する宇井氏は、ご自身の苦労から起業に至った経営者です。第9回全国大会経済産業大臣賞を受賞しています。
今回は、ロボティクス技術でヘルスケア業界を支える株式会社abaを立ち上げた、宇井吉美氏の魅力に迫ります。
起業のきっかけ
“大学時代に学生プロジェクト内で開発していた排泄検知機を製品化するため 起業しました。
ただ当初は介護機器メーカーにコンタクトを取り、大学・企業間での共同開発をしよ うとしていましたが、東日本大震災の影響で新規プロジェクトが立ちあげられず、共同 開発ができないならば自分たちで起業しようとなりました”
彼女が諦めなかったのは、祖母の介護体験が影響しています。
"おばあちゃんの愚痴を聞いてくれるロボットがあったらいいな"
祖母がうつ病になり、人間による介護に限界を感じた宇井氏。高校時代にコミュニケーションロボットの存在を知り、その勉強をするために大学へ進学します。そこでロボット工学を学び、大学院進学ではなく、起業という選択をします。
ピンチはチャンス
“(起業後、最も苦労したことは)技術者が 0 人になったことです。私は完全に企画、営業担当だったので、メーカーな のに技術者がいなくなったのは本当に堪えました。
しかしその間も資金調達に駆け回り、調達したらそのお金で大学時代の友人に開発を してもらい、なんとか製品化を続けました。
結果的にはこの時外注していた友人を aba にスカウトすることができ、まさにピンチ はチャンスだと身をもって体験しました”
事業を続けるうえでトラブルはあったものの、製品化が実現するまで諦めない、彼女の意志の強さには脱帽です。
「介護者の負担を軽減させたい」という思いを持ち続けていたことで、窮地に陥ってもそこから事業全体を好転させることができたのだと思います。
事業内容
"これまでは,この排泄リズム取得を,逐一介護士が高齢者のおむつ状況を確認することでリズムを把握していました。
私たちabaは,この排泄リズム取得をお手伝いするため,排泄検知シートLifilmを開発しました。
Lifilmを使用すれば,排泄リズムを自動で把握し,そのリズムを掴むことで様々な業務改善につなげることができます"
Lifilmが排泄物のにおいを検知し、利用者の排泄状況を把握できるようです。
記録業務も担ってくれるので、介護士にとっても便利です。
ひとの生きる力を引き出す
“aba のミッションは「よく生き よく死ぬ 未来つくり」です。
医療施設や介護施設を回っていると、如何に患者さんや高齢者の「生きる 力」を引き出すことが大変か痛感します。
この「生きる力」を引き出すお手伝いをさせていただき、回りまわって 「よく生き よく死ぬ 未来つくり」を実現したいと考えています”
宇井氏は実際に介護施設でボランティアをして、認知症の利用者がだんだんと彼女のことを覚えてくれたり、笑顔を向けてくれたりするのが本当に嬉しく感じ、これからもヘルスケアに関わっていきたいと語っています。
実現したい未来を描き、強い意志を持ち続けて努力を重ねることが、その先に進むために必要です。ぜひ参考にしてください。
プロフィール(abaホームページより引用)
宇井吉美
株式会社aba 代表取締役、千葉工業大学卒。
中学時代に祖母がうつ病を発症し、家族介護者となる。その中で「介護者側の負担を減らしたい」という思いから、介護者を支えるためのロボット開発に道を進める。
在学中に介護者を支援するためのロボット開発をおこなう「学生プロジェクトaba」を発足。
その後、プロジェクト内の開発を製品化するべく、法人化。株式会社abaを設立した。
現在、第一製品Lifilm(リフィルム)の製品化のため、営業、マーケティング、資金調達など、開発以外の社内業務を一手に引き受ける。
またその事業性、社会性、革新性が認められ、様々なビジネスコンテストで受賞、メディア掲載も多数ある。
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