今回のインタビューは、アメリエフ株式会社・代表取締役社長である山口昌雄さんに「自社の強み」「事業が軌道に乗ったタイミング」「今後の成長戦略」について伺いました。
【経歴】
1976年、東京都生まれ。99年城西大学理学部卒業。2000年理化学研究所遺伝子多型研究センター入所、パリ第6大学留学などを経て、07年京都大学医学系研究科博士後期課程修了。09年アメリエフ設立。

 事業内容

バイオインフォマティクスのデータ解析を主な事業にしています。
もともと私は研究者で、研究では、遺伝子の解析、それも個人ごとの遺伝子解析を研究テーマとしていました。その流れから、まずは、研究者がもっている生物学情報を預かり、データ解析の受託事業から始めました。
初めは社内で解析用のソフトやシステムを準備してお客様のデータ解析を行っていましたが、次第にお客様からその解析用のソフトやシステムの開発・販売をしてほしいというご要望をいただくようになり、システム開発・販売サービスも提供するようになりました。
販売していると、専門性の高いシステムなので、今度は「使い方を教えてほしい、トレーニングをしてほしい」という要望をいただくようになり、研究者向けのトレーニングやコンサルティングを行うようになりました。
このような経緯で現在では、「受託のデータ解析」「システムの解析・販売」「トレーニングやコンサルティング」と、大きく3つの柱でビジネスを進めています。
 
お客様の約8割は、大学や研究所等の研究機関で、ごく一部で民間企業(製薬会社や日用品メーカー)の研究所もいらっしゃいます。
ここまで6年半事業を進めていて、ある程度アメリエフという社名が浸透してきた、という実感があります。今後は、少しずつ基礎研究以外の分野にも事業展開していきたいと考えています。

バイオインフォマティクスとは

バイオインフォマティクスと一言で言っても、非常に広い定義の言葉です。大きな枠としては、「バイオ(生命科学)」の情報を、「インフォマティクス」すなわち、コンピューター・情報工学で処理するという分野となります。
一昔前の生物学の研究では、実験者が実験をしてデータを出し、それをエクセルで処理すれば十分なデータ量でした。しかし近年では、生命科学の機器が発展し、データ量が膨大になりました。いわゆる生命科学版のビッグデータが出るようになり、そのデータ解析がバイオインフォマティクスのテーマです。
世界中で解析ソフトウェアを使いながら最先端の研究が進められていて、解析ノウハウが常に論文化されています。
ソフトは市販のものとオープンソースのものがあり、市販のものは開発会社や販売会社より提供されていますが、弊社では、世界中の研究者が研究用に開発したオープンソースソフトウェアを解析に使用して事業を進めています。

2種類の競合

バイオインフォマティクスの企業は大きくベンチャー系と大手系の2種類に分けられます。
ベンチャー系ですと、90年代から事業を進めているような会社が2~3社だけ存在します。大手系ですと、三井系や三菱系などの大手財閥系列で、もともとはシステム会社でライフサイエンス事業部を持っている企業がいらっしゃいますが、競合になることはほとんどありません。

参入障壁の高さと学術に精通した社員

バイオインフォマティクスというテーマの専門性が非常に高く、参入障壁が大きいと思います。
参入障壁があっても入ってくる会社もあると思いますが、我々の強みは、全員が大学院卒で、論文を読んで研究を理解できるところです。
 
どうしても手間隙がかかってしまいますので、データ解析は決まったやり方だけをこなしたいというのが、効率を上げるには一番大事なやり方です。しかし、あえて逆をやっているのが我々で、先生方やお客様の研究の内容を聞いた上で、どんな解析がしたいかをお聞きします。その上で必要に応じて論文を読んだり、世界中で最先端の手法を独自に調査します。その調査結果から、こういった解析手順がよいのではないでしょうか、という提案を行い、お客様と一緒に方針を決めてサービスを提供しています。
ビジネス的には労働集約型で、大きくすぐに拡大できるようなモデルではありませんが、多くの生命科学の研究者の方が解析できなくて困っていますので、そちらに真摯に向き合って解析のお手伝いをするスタンスでやっています。それが我々の強みです。

【よく読まれている記事】
おすすめの記事