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現代の経営者に求められる資質

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 あなたは次の選択肢のどちらが好みですか?
  
 「自分の専門に関することを深める」or「知らない分野について知る」
 「自分の専門性を活用できる複雑な問題」or「解決方法の見当もつかない未知の問題」
  
 どちらが好きか、または得意か考えてみてください。
  
 それぞれの問いで前者を選んだ方は学びの「深さ」を、後者を選んだ方は学びの「広さ」を重視する人です。
 どちらも一長一短で、両者とも企業に必要な人間であることに違いはありません。
 しかし、今回は現代の経営者に求められる資質を考えます。経営者を目指す学生にもぜひ意識してほしい能力です。
  
 高速で環境が変化していく現代の経営者に求められるのは「学びの素早さ」、
 そして、その観点で見たとき、経営者に向いているのは学びの「広さ」を重視する人です。
  
 経営のトップは、学びの素早さ(ラーニング・アジリティ)に優れていなければならないのです。
ラーニング・アジリティはなぜ必要か

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 学びの素早さについての話は2016年10月10日の日本経済新聞で、
 人事コンサルティング企業であるコーン・フェリーのCEOゲーリー・バーニソン氏が語ったものです。
 なぜ、現代の経営者にはラーニング・アジリティが求められているのでしょうか?
  
 ビジネスを取り巻く環境は不安定です。21世紀に入り、その変化のスピードは上がり続けています。IT、AIなどの技術革新や進むグローバル化が大きな要因です。
 他にも、イギリスのEU離脱やトランプ大統領の誕生など、ビジネスに影響を与える事件はいくらでもあります。
 ビジネス分野の中で考えても、AirbnbやUberの出現は宿泊業界、タクシー業界などに影響を与えています。
  
 このような中、以前のようにただ一つの専門分野があればいい、という時代は終わりを迎えつつあるのかもしれません。
 変わる周囲の環境に応じて、会社の経営方針、事業分野を変えていく必要性があるのです。
  
 そのための1歩目として、経営者自身の学びの素早さが求められています。
ラーニング・アジリティ―3つの「はやさ」

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 では、学びの素早さといいますが、何をもって「はやい」といえるのでしょうか。
  
 今回、私は3つの「はやさ」を提案したいと思います。
  
 1つ目のはやさは、「学び始める早さ」です。
 環境の変化、時代のトレンドを感じ取り、次に自分が学んでおくべきものが何であるのかを素早く感じ取る力のことです。
 この速さに優れている人は、いわゆる先見の明に優れていると呼ばれます。
  
 日頃から他業界、政治環境、新技術などの観察を行い、自社の事業にどのような影響を与えるのかを考え続けることが大切になります。
  
 2つ目のはやさは、「学びを切り替える素早さ」です。
 新しく学習するべきだと思った分野の学習を即座に開始する能力です。
  
 普通はそれまで専門としていた分野から離れるのは恐ろしいことだと思います。
 しかし、ラーニング・アジリティは変化を恐れない力でもあるのです。
  
 3つ目のはやさは、「学習する速さ」です。
 やはり「はやさ」というからには学習速度も大切な能力です。
 時間もないであろう経営者ならなおさらですよね。
  
 とはいっても、前の2つの速さと比べて意識したところで仕方のないものだと思う人もいるかしれません。もともとの理解力の問題だと考えがちです。
  
 もちろんそういった部分もあるでしょうが、今回はラーニング・アジリティを考えるうえで意識してほしいことを紹介します。
積み木モデルとスイッチバック学習

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 学習の仕方には大きく分けて2つの種類があります。この2つの学習法を使い分けることが大切です。
  
 学校での勉強を思い出してください。「数学」で考えてみましょうか。
 高校の最初は式と方程式を習います。その後2次方程式、図形など様々な分野へと進んでいきます。
 まずは基本の公式を覚え、基本問題を解き、練習問題に進み、発展問題へと至るでしょう。
  
 このように、基礎から発展へ、積み木を重ねていくように行う学習の仕方を「積み木モデル」といいます。
 体系的に物事を学ぶときには有効な方法です。
  
 しかしこの方法、学習速度に大きな差が出ます。そもそもたいてい基礎は面白くないですし、それだけでは役に立たないことも多いです。
 結果、モチベーションを保つのは難しくなります。
 全体感を持つのが苦手な人にとっては苦痛を伴う勉強法です。
  
 ではもう1つの学習方式を紹介します。それが「スイッチバック学習」です。
  
 実はこの学習法、全く珍しいものではありません。むしろ私たちが自然に行っているのはこちらの学習法です。
  
 炊飯器を買った時をイメージしてみてください。初めての型の炊飯器です。
 その炊飯器でご飯を炊くとき、いちいち説明書のすべてに目を通すでしょうか。おそらく、米の炊き方だけ、もしかすると全く読まずに勘で使うかもしれません。おかゆを作ろうとなった段階でおかゆのページを探して使い方を学習します。
  
 これがスイッチバック学習です。必要なときに必要な知識を学習し、その繰り返しにより知識を繋げていきます。
 スマホで検索、書籍の目次を見てその部分だけ読む、知り合いに教えてもらうなど、この学習方式に使える手段はたくさんあります。
  
 ラーニング・アジリティにおいてはこのスイッチバック学習をメインにしてはどうでしょうか。
  
 役立つポイント、事業との関連性などでとりあえず学ぶパートを決めていきます。
 その後ある程度知識がたまって、いざビジネスに使おうと思った段階で、はじめて積み木モデルによる学習法を行います。
 スイッチバック学習のみだと、穴あき状態になった知識がピンチを招く危険性があるからです。
  
 「結局積み木モデルかよ」と思った人は心配しないでください。
 人間の理解は白紙の上で始まるわけではなく、その時までに経験した事柄、理解している考え方などに基づいて行われるのです。
 つまり、すでにその分野に関する知識を持っているあなたは、ゼロから積み木モデルを行う人とは違います。理解速度ははるかに早くなるはずです。
  
ラーニング・アジリティを鍛えるために

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 ラーニング・アジリティは現代の経営者にとって重要な能力です。
 環境の変化を感知する早さ、学びを切り替える素早さ、そして学習速度。
  
 意識して日々を生きているうちにその能力は上昇します。
 社会人の皆さんは忙しい日々の中でこそ実践的な方法の発見を目指してください。
 比較的時間のある学生の皆さんは知的理解力、多分野への興味を高めていきましょう。
  
 変化を追い求める者にこそ、ビジネスのチャンスはやってきます。
 
 
 
 
 
 
 
 



















 
 
