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UXをデザインする
出典:gahag.net
「スターバックスはコーヒーを売っているのではない。体験を売っているのだ」
上のフレーズはスターバックスの元CEO ハワード・シュルツ氏が言ったものです。
最近では、UI/UXをデザインする、という表現も一般的なものとなってきました。
UXとはユーザーエクスペリエンスの略で、サービス・プロダクトによってユーザーが得られる体験のことです。
しかしなぜUXをデザインする必要があるのでしょうか?
どのようにUXをデザインしていけばよいのでしょうか?
今回はUX(User eXperience)に迫っていきます。
記事の後半では、UXデザインにおいて重要になる“3つのUX”について解説します。
UXとは? UXデザインとは?
出典:gahag.net
UXとはUser eXperienceの略で、ユーザー体験などと訳されます。
文字通り、ユーザーがそのサービス・プロダクトを通じて獲得する体験のことを指します。
このUXをデザインするのがUXデザインです。ユーザーの体験をデザインするわけです。
「体験をデザインする」という表現に少し違和感を覚える人もいるかもしれませんが、意外と身近な概念です。
わかりやすい例だと、サプライズパーティーがあります。
どうすれば相手が驚いてくれるか、楽しんでくれるかを考えてプランを練る。この工程が「体験のデザイン」なのです。
すなわち、UXデザインは企業がユーザーにどんな体験を提供するのか考えることなのです。
UXとUIの関係
起業tv編集部作成
また、UXとUIはよく一緒にいる言葉です。この2つの関係も見ておきましょう。
UIとはユーザーインターフェース(User Interface)、ユーザーとプロダクト・サービスの接点のことです。簡単に言うと、「ユーザーが見える、操作できる部分」を指します。
UIの方がUXよりも一般的な言葉かもしれません。
UIデザインはUXデザインを構成する一部分です。
間違っても「UX=UI」ではありません。
UIをデザインすることは、ユーザーの体験に干渉するわかりやすい手段です。
UIデザインをすることのないUXデザインはあまりありません。
それゆえUIとUXを同列視してしまいがちなのです。
UIデザインはUXデザインの一部に過ぎないということを覚えておきましょう。
しかしそもそも、なぜUXをデザインする必要があるのでしょうか?
なぜUXをデザインする必要があるのか
実際、以前はUXデザインという言葉は使われていませんでした。
「モノからコト消費の時代になった」
一度は聞いたことがあるフレーズでしょう。これはUXデザインの必要性を示唆しています。
モノ(手段)からコト(体験)に焦点が変わったのです。
手段、すなわちソリューション単体だと容易に模倣される時代です。模倣されなくても代替となるソリューションが必ず存在します。
そんな環境の中、ユーザーに自社のサービス・プロダクトを使い続けてもらうためには、より包括的にユーザーの体験をデザインする必要性が出てきた、というわけです。
UXデザインの流れ
起業tv編集部作成
さて、ではUXデザインの方法についても考えていきましょう。
UXデザインは大きく2つの工程に分けることができます。
1つ目は、「ユーザーを分析し、体験を設計する」こと。
2つ目は、「設計した体験が実際に得られるようなプロトタイプを作る」ことです。
UXデザインには様々な手法が存在しますが、ここでは「ペルソナ」「カスタマージャーニー」「UXブループリント」を見ておきましょう。
「ユーザーを分析し、体験を設計する」はインタビューやテストによって行われます。
そのためには当然「ペルソナ」が必要になってきます。
UXデザインの前にまずはペルソナをつくりましょう。
次に役立つのが「カスタマージャーニー」です。
カスタマージャーニーとは、ユーザーがある目標を達成するまでの行動・思考・感情の一連の流れを示し、その中でサービス・プロダクトとのかタッチポイント(接点)を探すものです。
カスタマージャーニーを使うことで、UXをより詳細にイメージすることができます。
最後のUXブループリントは、プロトタイプを作るための設計図です。ブループリントというのは「青写真」を指しています。
UXブループリントの作成方法はいろいろなものがあります。
基本的な流れは以下のようになっています。
① インタビューやカスタマージャーニー、プロトタイプカンバンボードなどを通して得られた「提供したいソリューションの構成要素」を集める
*「ソリューションの構成要素」の例:ログインする、課金でバージョンアップする、広告を見る
② 「ソリューションの構成要素」をカスタマー目線で構造化する
③ 構造化した「ソリューションの構成要素」をプロダクトに落とし込んでいく
UXブループリントができたら、実際にプロトタイプを作っていきます。
プロトタイプを見ながら、さらなるUX改善を図っていきましょう。
さて、ここまででは触れてきませんでしたが、UXデザインにおいてもう1つ知っておくべき事実があります。
UXは1つではない、のです。
知っておくべき“3つのUX”とは?
3つのUXとは
起業tv編集部作成
ユーザーがアプリを触っているとき、カフェでリラックスしているとき。
これらはすべてユーザーがプロダクト・サービスを利用しているときのUXです。
したがってこのUXは「利用中UX」と呼ばれます。
UXといわれて一般的に想起するのはこの利用中UXです。
UXはこれだけではありません。
わざわざ利用中UXという名前がついている、ということは当然「利用前UX」「利用後UX」も存在するのです。
「利用前UX」は、友人に聞いたり広告を見たりして、初めてユーザーがプロダクトと出会ったときから実際に利用し始めるまでの体験です。
まだ見ぬプロダクトへの期待で構成されるため、「予期的UX」ともいいます。
利用前UXで重要になるのは、プロダクトを「使ってみたい!」と思えるわかりやすさです。
この段階でユーザーを脱落させてしまっては、いくら利用中UXを作りこんでも意味がありません。
「利用後UX」は、実際にプロダクトを利用した後の体験を指します。企業からのフォローなどに加え、SNSでのシェア、アプリ内での評価などがあたります。
利用後UXは「エピソード的UX」ともいわれます。
利用後UXで重要になるのは、いかにユーザーが「再利用したい!」と思えるようにするかです。
この体験をデザインすることで継続的な利用を促すのです。
累積的UXとは
起業tv編集部作成
実はUXにはもう1つあります。
これまで見た利用前UX、利用中UX、利用後UXを通して累積するUX、「累積的UX」です。
「累積的UX」は個々の体験に対する感情ではなく、プロダクト・サービス全体に関する体験・感情です。プロダクトの評価はこの累積的UXで決まるとも考えられます。
累積的UXでは、ユーザーのプロダクトへの習熟度を上げる、報酬を与える、時間・投稿などを投資させてスイッチング・コストを上げるなどの施策をとります。
3つのUXと累積的UX。
最初から最後まで包括的にUXをデザインしていくことで、ユーザーが定着するコンテンツ・サービスが生まれるのです。
UXデザインの視点
最後に、UXデザインで使える視点をいくつか紹介しておきましょう。
(以下の視点は『起業の科学-スタートアップサイエンス』で述べられているものです)
<使うときのカスタマー負担を減らす>
- ・時間
- ・体力
- ・ブレインパワー
- ・社会的承認
- ・お金
- ・日常性
- ・安心・安全
使う時間や身体的・精神的労力を減らしたり、社会や日常の文脈から逸脱しないようにしたりすることで、カスタマーの負担を減らし、UXをデザインする視点です。
<人間の認知の癖を使いモチベーションを高める>
- ・希少効果
- ・フレーミング効果
- ・アンカー効果
- ・バンドワゴン効果
- ・エンダウド・プログレス効果
- ・コンコルド効果
人間の認知活動にはいろいろな癖があることがわかっています。
表現の違いで印象が変わる「フレーミング効果」や使っている人が多いと自分も使いたくなる「バントワゴン効果」などがあります。
<カスタマーに投資させる>
- ・関連情報入力
- ・選好の入力
- ・レベルアップ
- ・コンテンツ投稿
- ・フォロワー
- ・評価
ユーザー自身にプロダクトに投資してもらい、プロダクト内にユーザーの跡を残してもあることで定着を図るUXデザインです。
<報酬の設定>
- ・ソーシャルの報酬
- ・ハントの報酬
- ・達成感の報酬
- ・自立性の報酬
- ・熟達の報酬
- ・予測不能な報酬
ここでいう報酬とは物質的なもの以上に精神的なものを指します。
自主的にリソースを探したり、適切なフィードバックを与えたりすることでUXをデザインします。
これらの視点についての詳しい説明は『起業の科学-スタートアップサイエンス』を読んでみてください。UXデザインに関する事例や、プロトタイピングの手法についても学べます。
包括的にUXをデザインしよう
出典:gahag.net
UXに関する基本を知っていただけたでしょうか?
UXデザインはこれからの新事業開発において欠かすことのできないプロセスです。
そして、UXデザインとは試行錯誤の繰り返しで進んでいきます。
デザインという言葉を恐れず、積極的にUXデザインに関わってみてください。