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経営者の仕事|ビジョンと利益と一致させること
出典:gahag.net
「いくつかの事業を回しているが、なにか噛み合っていない気がする」
企業が掲げる未来への展望、同時に果たすべき株主への責任。
ビジョンと利益。「やりたいこと」と「すべきこと」。
経営者の仕事は、これら2つを一致させることにあります。
しかし現実に上手くっていない時というのは必ずあります。
そんな時、経営者の強い味方になってくれるのが、今回紹介する「バリューポートフォリオ」です。
ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によって考案されたこのバリューポートフォリオは、今ある事業を適切な形に再構築するための足掛かりになります。
今回は、バリューポートフォリオの持つ価値とその使い方について見ていきましょう。
バリューポートフォリオとは?
バリューポートフォリオとは、「ビジョンとの整合性」と「ROI」の2つの軸で事業を4象限に分けて分析するポートフォリオ型のフレームワークです。
同じようなポートフォリオ型フレームワークとして有名なものにPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)があります。
バリューポートフォリオもPPMもBCGが考案したもので、汎用度の高いフレームワークとなっています。PPMは、「市場成長率」と「市場占有率」で事業を分析し、リソースをどのように分配するかを決定するフレームワークでした。
それに対して、バリューポートフォリオは「経営者視点」「株主視点」の2つから事業の再構築を目指すフレームワークとなっています。
ビジョンとの整合性は、「企業が掲げているビジョンにつながる事業なのか」どうかを考える経営者の視点です。
ROIは、「投下したリソースに対してどのくらい利益が出ているか」を考える株主の視点になっています。
バリューポートフォリオはこれら2つの視点をつかって、事業を分類し、それぞれの事業の持つ課題を浮き彫りにしていきます。
バリューポートフォリオの4象限
バリューポートフォリオの2つの軸「ビジョンとの整合性」「ROI」によって下図のような4象限が得られると思います。
順番に見ていきましょう。
本命事業(ビジョンとの整合性:高、ROI:高 )
PPMでいうと花形の位置にあるのがこの本命事業です。
本命事業は経営者にとっても株主にとっても重要で素晴らしい事業となります。
経営者は引き続きこの事業を成長させるべきであり、株主もそれに期待することでしょう。
課題事業(ビジョンとの整合性:高、ROI:低 )
ビジョンと合っているので、経営者としてはぜひ継続した事業です。
しかし、一般的な株主からするとROIが低いこの事業に魅力はありません。
株主から撤退するよう圧力を受けないためには、経営者はこの事業の収益化、そのための計画を練り実行する必要があります。
機会事業(ビジョンとの整合性:低、ROI:高 )
この事業はROIが高いため、株主にとってはうれしい事業ではありますが、ビジョンに合わないため本来取り組むべき事業ではありません。
長く本業でないものに携わり続けると、ブランドイメージが揺らいだり、従業員のビジョンに対する意識が薄れたりする危険性があるからです。
しかし企業が存続するために収益源は大切です。
したがって、経営者はこの事業をビジョンと整合するような形へと作り変える必要があります。
見切り事業(ビジョンとの整合性:低、ROI:低 )
ビジョンとも合わず、利益も出ない。
そのような事業を続ける意味はよく分かりません。
顧客への責任を果たしたら、早々に撤退してしまいましょう。
バリューポートフォリオを用いた戦略思考
バリューポートフォリオによって事業を4象限に分類出来たら、ここからが経営者の仕事です。
「本命事業」と「見切り事業」に関してやるべきことはわかると思います。
重要なのは「課題事業」と「機会事業」です。
バリューポートフォリオではこれらの事業をいかに「本命事業」に持っていくかを考えます。
課題事業では、収益があがる形をつくる。
機会事業では、ビジョンに合うような形をつくる。
「ビジョンに合っているから」「利益が出ているから」
そんな単一の視点では経営者の役割は果たせないのです。
バリューポートフォリオは、経営者(ビジョンを追求すべきもの)と株主(利益を追求すべきもの)の2つの視点を取り入れることで、事業再構築の方向性を示してくれます。
企業が歩むべきストーリーとそれを支える利益の両方を守るため、いざ事業再構築の戦略を考えましょう。
バリューポートフォリオで事業を再構築しよう
出典:publicdomainq.net
事業がいまいち上手く回っていない。
そう感じたらポートフォリオ型のフレームワークを使ってみてください。
リソースの配分はPPMで、事業の再構築はバリューポートフォリオで検討できます。
バリューポートフォリオは事業からの撤退を示唆するものではなく、どの事業とどの方向性に持っていけばいいのかを測るフレームワークです。
ビジョンも利益もとってこそ、真の営利企業と言えるでしょう。