DXという言葉を聞いたことがあるでしょうか。今、世界中でDXの重要性が訴えられており、日本でも経済産業省がガイドラインを示すなどしてDXを広めようとしています。しかし、ある調査によると米国やシンガポールの企業の8割から9割がDXを推進しているのに対し、日本の企業は3.5割しか推進していないようです。DXが重要だと言われているにも関わらず、日本のDXは他国に比べて遅れているのが現状です。

1.  DXとは

1-1.  定義

そもそもDXとはデジタルトランスフォーメーションの略のことで、2004年にスウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された『ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる』という概念をさします。この概念を経済産業省は明確かつ具体的に定義づけ、発表しています。その内容は、『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』です。

つまり、デジタル技術を用いることで、人々の生活をより良いものへと変革させること・今ある“当たり前”を根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらし、市場で優位になることがDXであるということです。

定義だけをみてもあまりピンとこないと思いますので、デジタイゼーション・デジタライゼーションと比較しながら具体的な例を用いてもう少し深く掘り下げてみましょう。

1-2.  デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い

DXは、デジタイゼーション・デジタライゼーションとともに説明されることが多い単語です。

デジタイゼーションとは、例えば、紙ベースで管理していた書類を、電子データ化するような作業のことで、作業の効率化を目的としたデジタル化を指します。

デジタライゼーションとは、デジタイゼーションでデジタルに置き換えたデータを利用することで、さらにビジネスや業務全体を効率化することを言います。例えば、上記で電子データ化したものを用いて、通常は高度な技術が必要なデータ分析などをAIの機械学習を活用して誰でも簡単にデータ分析ができるような仕組みを構築することです。

デジタイゼーション・デジタライゼーションは主に既存事業の効率化を目的として行う、現場レベルのデジタル化のことを示すのに対し、DXはデジタイゼーション・デジタライゼーションを前提としてデジタル化することで、社会に大きな影響をもたらす新規事業の開拓を行うことを指します。デジタライゼーションのためにデジタイゼーションを行い、DXのためにデジタライゼーションを行うといったイメージです。最近の例でいうとuber eatsがこれにあたります。配達したい店・配達したい人・配達してほしい人をデータ化しアプリ上で管理することで収益を得る新たなビジネスモデルは、コロナの影響もあいまって私たちの生活の一部となりました。DXは、uber eatsの例のように、ITを用いた変革が社会全体をリーチすることを表すのです。

次の章では、なぜ重要視されているのか、DXを行ったらどんなメリットがあるのか、逆に行わなければどんなリスクがあるのか考えていきたいと思います。

2.  なぜ今DXが必要なのか

2-1.  新たなビジネスモデルの参入

近年ではデジタル化が進み、少し前では想像もつかなかったようなサービスや製品が次々登場しています。例えば、Net FlixやAmazon prime などの動画配信サービスがあげられます。これらが導入されたことで自宅から一歩も出ずに多くの映画やドラマを視聴することができるようになりました。このサービスは多くの消費者に刺さり、急速に普及していきました。これにより、レンタルビデオ店やDVDを作成している企業が大きな打撃をうけたことは容易に想像できるでしょう。

このように、劇的な環境の変化により、当たり前にあったものがなくなり、新たな当たり前が作り出されるのです。だから企業はこのような環境の変化に取り残されないためにも、新たな当たり前を作り出す側になる必要があるためDXを推し進めなければならないのです。

2-2.  2025年の崖

では、DXを推進しなければ具体的にどのようなことが起こるのでしょうか。経済産業省が発表したDXレポートの中で“2025年の崖”として詳細が明記されています。

そもそも2025年の崖とは複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムが残存した場合に想定される国際競争への遅れや日本の経済の停滞などを指す言葉です。大規模なシステム構築を行ってきた人材が定年退職の時期を迎えることや、複雑化したシステムの維持費上昇、消費者マインドの変化などから2025年にこのような事態が起きると警鐘されています。経済産業省はこの崖を越えなければ、日本経済は2025年から2030年にかけて年間約12兆円の損失を生むと指摘しており、この危機を脱するためのカギはDXだと訴えているのです。

これまでの説明で、DXとはなにか・なぜ重要なのかということはご理解いただけたかと思います。次の章では、DXの推進方法についてみてきたいと思います。

3.  DXの推進方法

DXの推進方法について、経済産業省はDX推進ガイドラインを提示しており、本章ではその内容を①DX推進のための経営のあり方、仕組み②DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築の二つの要素から要約して説明していきます。

3-1.  DX推進のための経営のあり方、仕組み

経営の在り方として示されている指標は、「経営戦略・ビジョンの提示」「経営トップのコミットメント」「DX推進のための体制整備」「投資等の意思決定のあり方」「DXにより実現すべきもの:スピーディな変化への対応力」の五つです。特に最初の二項目が重要だとされています。

「経営戦略・ビジョンの提示」については、革新的なビジネスモデルを構築するには、なにか新しいことをしようなどといった漠然とした目標ではなく、目的や目標を具体的に定める必要があるとされています。抽象的な目標では既存業務のデジタル化のレベル、いわゆるデジタライゼーションでとまってしまうからです。まずは、経営者や幹部がAIの導入によってどのような結果を求めるのか具体的な施策や経営戦略を提示しましょう。

つぎに、「経営トップのコミットメント」は、DX成功企業は経営トップが号令をかけているケースがほとんどのため、推奨されています。DXは大きな変革を伴うものです。変化するときはポジティブな意見ばかりではなく、ネガティブな意見も発生しますから、対立を生む可能性も十分にあります。そのようなとき、経営トップがリーダーシップを発揮し、意思決定を行うことで組織を同じ方向に向かせる必要があるのです。

この二項目を念頭に置き、残りの三項目も備えることでDX推進に適応できる経営体制になるのです。

3-2.  DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築

DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築は①体制と仕組み②実行プロセスの2項目で構成されています。

体制と仕組みでは、多くの日本企業が陥っている、事業部門ごとに異なるシステムを構築したが故に、システムが複雑化・ブラックボックス化する現象の解消を訴えています。なぜなら、DXは新たなビジネスモデルの構築や社会の常識を覆すようなイノベーションを起こすことであるため、一部工程・事業にとどまらず、全社最適となるような柔軟な対応力をもったシステムを構築する必要があるからです。これは、全社的なITシステムの構築のための体制・全社的なITシステムの構築に向けたガバナンス・事業部門のオーナーシップと要件定義能力の三つを備えることで実現が可能だと経済産業省は主張しています。

実行プロセスでは、システムが全社の中で最適に活用されるために、俯瞰的にシステムを管理できるIT人材の重要性について示されています。今、多くの日本企業が、社内のIT人材が不足している状態です。システム開発の大半を外部委託しているため、新しい取り組みに対するスピード感がなく市場投入が遅れてしまいます。よって、IT人材を自社で育成することはDX推進に必要不可欠なのです。人材育成を手助けするマニュアル自動作成ツール(Dojo Sero)などを活用するのもよいでしょう。

以上が大まかなDX実現方法です。

4.  DXで企業に明るい未来を


DXはこれまで述べたように、企業の在り方を大きく変える必要があります。そのため、実現することに躊躇してしまう企業も少なくないと思います。ただ、2025年の崖を乗り越えることができれば、2030年の実質GDPは130兆円になるという見解がなされています。IT導入によりかかる費用を一部国が補助してくれる制度(IT導入補助金)なども存在しますので、それらを活用しながらDXを推進していきましょう!

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