2018年、大注目の『ティール組織』


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毎年多くの本が出版されるビジネス書・マネジメント分野

その数多ある本の中2018年1月24日に発売されたある本が、注目を浴びました。

その本こそが、『ティール組織 マネジメントの常識を覆す次世代組織の出現』です。

同書は、2014年に発売され、全世界で20万部を売り上げた『Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness』の邦訳です。
発売されて3ヶ月で3万部を売り上げました。

多くの人事・マネジメント系の人材が注目する「ティール組織」とは一体どのようなものなのでしょうか?

分厚い書籍(500p越え)を読む前に、ティール組織の基本だけ学習しておきましょう。

ティール組織とは?


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ティール組織とは、階層などのシステムに依存せず、従業員それぞれが自分の最大限の力を発揮しながら仲間と協力し、結果を出す組織モデルのことです。
自主経営全体性存在目的の3つのブレークスルーを持っています(あとで解説します)。

著者フレデリック・ラルー氏が2年半にわたって世界中の組織を調査し、発見した新たな組織モデルの要素がまとめられた最新の、そして未来の組織モデルです。

『ティール組織』では、無色・神秘的(マゼンタ)・衝動型(レッド)・順応型(アンバー)・達成型(オレンジ)・多元型(グリーン)・進化型(ティール)というパラダイムの変遷が提示されています。
衝動型(レッド)の時代から組織が生まれ、パラダイムの変遷とともに新たな組織モデルが発達してきました。

書籍では各パラダイムについて詳しく説明されているので、気になる人は一読ください)

ティール組織は変化の激しい世界に対応するために現れた組織モデルです。

本記事では各パラダイムについての詳しい説明は避けますが、達成型(オレンジ)についてだけは紹介しなければなりません。
ティール組織の理解のためには達成型組織との対比が不可欠だからです。

進化型(ティール)と達成型(オレンジ)

達成型(オレンジ)組織は、現代の多くの企業に当てはまる形です。
目標達成のためにイノベーションを起こし、階層的なシステムを持ちます。「効率性」「レイヤー」「アウトプット」「フロー」など工学の用語が多く用いられるため「機械としての組織」という見方もできます。

ティール組織と達成型組織は多くの点で異なります。
現在、達成型組織にいる人は「本当にそれで組織が成り立つの?」と思うかもしれません。

しかし一旦、組織に関するバイアスは置いておいてティール組織を見ていきましょう。

ティール組織の3つのブレークスルー


ティール組織には3つのブレークスルー(突破口)があると述べました。
今回は、達成型組織との違いをこの3つの観点から見てみることにしましょう。

自主経営(セルフ・マネジメント)

従業員1人1人が権限を持ち、流動的に活動する組織運営の形が「自主経営」です。

自主経営では、マネジメント層による支配を受けず、従業員が自分たちで意思決定をすることになります。
達成型組織で必要である面倒な稟議書を通す必要がなくなるのです。
しかしこれは誰もが自由に行動できるという意味ではありません。
必ず「助言」を求め、検討する必要があるのです。

例えば、新しい機器を購入しようとしたとき、ティール組織の従業員はその機器を購入する権限をすでに持っています。
しかし、実際に購入する前に必ず同僚たちに対して「助言」を求めなければならないのです。

このプロセスで「本当に必要か?」「○○で代替できるのでは?」「いっそのこと□□を買えば?」などの助言が得られます。
購入者はこれらの助言を検討したうえで最終の意思決定をします。
この「助言」プロセスにより、ティール組織は自主経営を運用可能のものとしているのです。

全体性(ホールネス)

2つ目の突破口は全体性(ホールネス)です。

達成型組織において、従業員は通常何らかの役職・ポジションについており、専門性の皮をかぶって働いています。
この状態を「全体性を欠いた状態、分離した状態」と考えるのが進化型(ティール)パラダイムの考え方です。
そして全体性を持っている方が、ストレスなく高いパフォーマンスを発揮できると考えています。

そのためにティール組織は、全体性を保つための様々な慣行を用意するのです。
組織の価値観の提示・具体化、オフィスの整備、コミュニティの構築、ストーリーテリングの実践など、全体性のための慣行にはいろいろなものがあります。

存在目的

(*原書ではEvolutionary purpose、訳に関しては『ティール組織』p.92を参照)

組織が存在・成長する目的です。組織が将来どのようになりたいのか、どのような目的を達成したいのかを示します。
達成型組織ではミッション・ステートメントなどの形で存在しています。

しかしながら『ティール組織』の著者は、達成型組織においてはミッション・ステートメントよりも「勝利」が優先されていると指摘しています。
大企業になればなるほど、組織存続のため競争に勝利し続けなければなりません。
結果として、ミッションが重要視されていない状況が生まれるのです。

ティール組織では存在目的に耳を傾けることがとても重要になってきます。
自主経営を行うティール組織では、意思決定権が分散しています。
そのため、従業員全員が存在目的に則って行動できるようにしておく必要があるのです。

存在目的に耳を傾けるとは、「存在目的が自分たちに何を求めているか」を考えることです。
存在目的に1個の人格を与えるのがティール組織の在り方になります。

以上、ティール組織の3つのブレークスルーについてでした。
詳しい具体例などは書籍『ティール組織』をご覧ください。

ティール組織は「コミュニティの組織化?」

ティール組織はとても実感しにくい組織だと思います。

最初の方でティール組織は「未来の組織モデル」だと述べました。
実は現在、完全なティール組織の例というのは挙がっていません。
原書の豊富な例も、3つのブレークスルーのいずれかを持っている状態など、まだまだ以降途中といった印象です。

しかしながら、確実にティール組織というモデルは未来に実現していると思います。

私自身はティール組織を「コミュニティの組織化」と考えています。
その観点から、日本におけるティール組織の片鱗を1つだけ挙げておきましょう。

TeensOpinion(吉田 巧巳)


出典:teensopinion.jp
最近わずか4分半で5000万円を調達してしまった無料の乗車サービス「nommoc」が注目を集めました。
そのnommocの仕掛人、若手起業家、吉田巧巳氏による最初のサービスが若者をターゲットにしたネット疑似選挙「TeensOpinion」です。

TeensOpinionはtwitter上でアイデアの発案・改善が行われました。ロゴやコピーもtwitter上で決まっていったそうです。

TeensOpinionの成立過程は、ティール組織のそれと近いものがあります。
1人の発案者とそれに対するアドバイス、そこには階層も役職もなく、ただサービス実現に向かって協力が行われていました。
まだ組織という形にはなっていませんでしたが、ティール・パラダイムの実現の例だと思います。

ティール組織について考えよう


出典:gatag.net
ティール組織はまだまだ未来の組織モデルかもしれません。
しかし最近では「コミュニティ」の持つ力が話題になってきています。
そして、ティール組織と「コミュニティ」という概念が近しいものがあります。

AIも発達し、人材の活用法や組織モデルは変化せざるを得なくなるでしょう。
これからの組織モデルについて考えてみてください。
ぜひ書籍もご一読ください。

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