偶然発見したものが、その後、世界中で普及する製品へ発展していくことはよくあることです。
以下でも紹介しますが、有名なものを挙げると、スリーエム社のポストイットやコカ・コーラ社のコカ・コーラでしょうか。
これらの製品はただラッキーなだけで偶然、発見されたのでしょうか?
サイエンスやビジネスの世界では、このような偶然の出来事から新しい発見をすることを【能力】と考え、“セレンディピティ”と呼びます。
今回は、セレンディピティの語源や事例を紹介します。

18世紀に生まれた造語「セレンディピティ」

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出典:www.kaiseisha.co.jp
セレンディピティという言葉が一般的になってきていますが、その起源は古く、18世紀のイギリスの小説家であるホレス・ウォルポールが生み出した造語です。セレンディピティは“セレンディップの3人の王子たち”という童話から生まれた言葉です。
ウォルポールが幼少期に読んだこの童話は、セレンディップ(現在のスリランカ)の王子達が、旅の途中で予想外の発見をする物語です。
賢い王子たちは、旅の目的とは関係無く、彼らの優れた能力を発揮して、有益な発見をします。
この童話が深く印象に残っていたウォルポールは、自分の発見を友人への手紙で説明した時に、セレンディピティという造語を作って説明します。
この手紙に記載されたセレンディピティという言葉が徐々に世間へ広まったと言われています。

セレンディピティの事例紹介

今日では、セレンディピティは幸運をつかみ取る力と言われるようになり、起業家にとって必要なセンスとも言われるようになっています。そこで、セレンディピティの具体例をいくつか紹介したいと思います。

セレンディピティ事例①「スリーエム社のポストイット」

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出典:www.mmm.co.jp
セレンディピティの代表例が、スリーエム社が開発したポストイットだと言われています。1969年、化学メーカーのスリーエム社の研究室では、強力な接着剤を開発していました。
しかし、出来上がったものは、粘着性の非常に弱い接着剤でした。この製品は使い道が無いと見なされ、放置されていました。ところが、1974年、同社研究員アーサー・フライがこの接着剤を使って本のしおりが作れないかと考えます。そして世に出たポストイットは、付箋として世界中に広まっていきます。
失敗作を当初の目的と全く違う用途の製品に転換する力が生み出したヒット商品が、ポストイットです。

セレンディピティ事例②「Twitter社のTwitter」

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出典:twitter.com
Twitter社は、もともとオブビアウス社と名乗っており、Twitterがメインの商品ではありませんでした。
Twitterを開発した2006年当時もオブビアウス社という名称のままで、Twitterはあくまでも同社の1製品という位置づけでした。しかも、Twitterは社員が遊びで作ったショートメッセージの交換ツールだったのです。
それが社内で人気となり、これに気付いた幹部が状況を調べると、このツールに中毒性があることを発見します。改良を重ねられ商品となったのがTwitterで、短期間で世界中に爆発的に普及します。
社内の遊びに成長性を見出し、それを本格的に改良して商品にした点は、注目に値すると思います。

セレンディピティ事例③「コカ・コーラ社のコカ・コーラ」

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出典:www.coca-cola.co.uk
19世紀半ば、薬剤師ジョン・S・ペンバートン博士がヨーロッパで人気があった薬用酒「ビン・マリアーニ」を真似て、「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」という商品を開発しました。
ワインにコカの成分を入れた「フレンチ・ワイン・アンド・コカ」は人気を集めたのですが、まもなく禁酒法が施行され、この製品は販売禁止になります。
ペンバートン博士はアルコールを使わない製品に開発に力を入れますが、上手くいきません。ある時に水と間違えて炭酸水を入れたところ、今までにない味の液体が出来上がりました。ペンバートン博士は、これは売れると考えて製品化したのが、現在のコカ・コーラの起源なのです。

セレンディピティに必要なもの

これらの事例を振り返ると、共通して言えるのは「変化に気付き、新しい価値観を受け入れる力があった」ことです。
偶然が起きる場を用意するには現場で数多くの試行錯誤が必要です。そのことを前提として偶然生じた反応を見落とさないこと。見落とさない能力が大きな発見に繋がるのです。
脳科学者の茂木健一郎氏は、とある講演で以下のようにコメントしています。

「セレンディピティに気づくためには3つの A が大切です。Action(行動)、Awareness(気付き)、Acceptance(受容)。新しい価値観を受け入れられるかどうかが重要で、すでに知識や経験やスキルがないと、出会ってもそれがセレンディピティだとわからない。ボーっと生きている人ではセレンディピティを生かせないのです(Evernote Japan)」

起業家も自分のアイデアに固執せず、柔軟な思考や新たな発見を前向きに受け入れることによってセレンディピティの恩恵を受けることができるはずです。ぜひ偶然の発見を引き起こすための準備を行ってください。

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