> > > 北大発ベンチャー、メディカルフォトニクスの世界初への挑戦「採血しない血液検査で、夢の健康管理を」
トレンドニュース

トレンドニュース

北大発ベンチャー、メディカルフォトニクスの世界初への挑戦「採血しない血液検査で、夢の健康管理を」

世界を変える新しい「コト」を創造するオムロン コトチャレンジ

2016年夏、京都にあるオムロン本社でハード系ベンチャーに特化したプログラムが開催されました。オムロンベンチャーズ株式会社が主催する「オムロン コトチャレンジ」です。

 

モノづくり力とグローバルメーカーとしての展開力を活かし、リソースの少ないベンチャーのプロダクト開発をサポートする、この企画。今年は34チームのエントリーがあり、その中から選ばれた5チームが成果報告会(Demoday)に臨みました。

 

今回はコトチャレンジに出場した北海道大学発ベンチャー、メディカルフォトニクス株式会社・飯永一也代表にお話を伺いました。メディカルフォトニクス株式会社は採血なしで脂質が測定できる製品を製造しています。

光で血液を検査する、新発想との出会いが変えた人生

pic-1

資料提供:メディカルフォトニクス株式会社

-起業の経緯を教えていただけますか?

私はもともと血液等を検査する製薬メーカーに勤めていました。前職で多くの研究者や医師の方と接する中で、食後の中性脂肪値が高い状態が続いてしまう「食後高脂血症」という疾患が注目されていることを知りました。

 

食後高脂血症とは、一時的に血液中の中性脂肪の値が上昇する症状のことです。肥満やメタボリックシンドロームの人は、食後高脂血症になる危険性が高くなります。

 

これを放置すると、健康な人に比べ心筋梗塞などの心臓病などになる危険性が約3倍になることがわかっていますが、一時的なもののため、通常の血液検査では異常が見つかりません。この検査は、採血を6~8時間内に10回程度しなければ見つからない、非常に身体に負担の大きいものです。

 

世界的に平均寿命が高まり、いつまでも健康で元気に生きることを願う人が増えるなか、今後、ますます予防の必要性が高まり、重要視される疾患になるだろうと私は考えていました。

 

そんなとき、北海道大学の清水孝一教授と出会いました。教授とは元々仕事で付き合いがあり、雑談の中から、彼の研究テーマの1つで、例えば静脈が見えにくい人に対して透視して注射することができるようになる「光を用いた診断技術」に強い興味を持ちました。

 

「この技術を使えば、注射針を身体に刺すことなく、日常どこでも簡単に血液検査ができるようになる。血液検査がもっと手軽になり、食後高脂血症の発見にも応用できるのではないか」と思い、「人任せではなく、自分の手でやってみよう。事業化して、世の人のためにこの技術を製品化しよう」と、起業を決意しました。

いつでも・どこでも・誰でも・簡単にできる血液検査でつくる健康管理の明日

pic-2

-解決したい社会課題について教えてください

医療機関での採血が要らなくなり、光で血液検査ができるようになれば、「いつでも、どこでも、誰でも、簡単に」血液検査ができるようになります。そうなれば、健康管理と重大な疾患の再発防止に大きく役立てられます。

 

血圧を測るのと同じような感覚で血液検査できることが当たり前の世の中になれば、疾患の見逃しを減らし、予防に貢献できます。

 

また、現在の医療では、心筋梗塞になってしまった方に対して、薬で正常な範囲まで脂質を下げることはできても、7割ほどの人が再発しているのが現状です。薬で一時的に下げたとしても、食後高脂血症によって再発してしまうのです。

 

脂質の多い食品を避けたバランスのよい食事と適正な食事量のコントロールは不可欠ですが、日常生活での血液状態を頻繁に確認できれば、医師の投薬量と食事の栄養バランスを、一人ひとりの身体と生活の状態に合わせて調節できるようになることも期待されています。

 

このように「いつでも、どこでも、誰でも、簡単に」血液検査ができれば、心筋梗塞や脳梗塞、狭心症などの再発防止にもつながるだけでなく、健康管理のあり方が大きく変わると考えられます。

製品化に向けた大きな第一歩を踏み出せた

pic-4-2

-コトチャレンジに参加したことで、変わったことはありますか?

私たちは技術開発を中心に行っている会社です。これまでに製品としてカタチにしたことがなかったので、基本的なものづくりのプロセスからアドバイスしてもらいました。

 

なかでも、苦労したのは計測したい脂質以外のノイズをセンサーが拾ってしまうという課題の解決です。オムロンは様々なセンシング技術を持っており、光センサーにも豊富な知見を持たれていました。一つひとつの技術的な課題をクリアしていくために、親身になってアドバイスをしていただきました。

 

そうしたなかで、今後製品化し、市場をつくっていくための具体的なステップを一緒に考え、次にすべきことが見えてきました。今後も継続してサポートを受けることになり、師弟のような関係ができたので、非常に嬉しく思っています。

研究者向けから一般向け、医師向けの販売へ

pic-4

-これからの事業の展開を教えてください

製品をさらに磨き、販売する段階に進みたいと思っています。まずは研究者向けの販売からです。

 

採血せずに血液検査できるようになるということは、研究機関で今までやりたくてもできなかった試験が可能となることを意味します。つまり、医学研究が加速度的に進むので、学術的発展にも貢献できると考えています。2~3年後には一般向け、医者向けへの販売形態を構築していきます。具体的にはライセンス提携というかたちで協力してくれるパートナーを増やしていきたいですね。

編集後記

pic-5

資料提供:メディカルフォトニクス株式会社

健康管理を大きく変えるという夢を、世界初の製品で

食後高脂血症の結果、動脈硬化が進行してしまうと様々な症状を引き起こします。心臓に大きな負担がかかることで、高血圧・心肥大・心不全などの心疾患につながります。また、血管が詰まってしまうので、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの危険性を抱えています。

 

これらの症状を引き起こさないためにも、定期的な健康管理が重要となります。オムロン コトチャレンジのなかで開発を支援する役割のメンバーたちも次のように述べています。

 

「体を傷つけることなく血中脂質を測定することは、ヘルスケアにとって夢のある技術であり、日常生活から健康管理を支えるオムロンと同じ考えを持っています。今後は世界初の血中脂質センサーを製品化し、新しい健康管理指標として世の中から認知されている製品を目指してほしいですね」

 

メディカルフォトニクス株式会社、そして飯永代表の今後の動向に期待しましょう。(聞き手:株式会社アントレプレナーファクトリー・菅野 雄太)

株式会社アントレプレナーファクトリー

Yuta Sugano

立命館大学経営学部卒業。12年神戸大学大学院経営学研究科入学、14年アントレプレナーファクトリー入社。

このオーサーに問い合わせする