今回は、株式会社Darma Tech Labの代表取締役である牧野成将さんに、日本初の量産化試作を対象としたハードウェアベンチャーのアクセラレータープログラム『Makers Boot Camp』について伺いました。

(インタビュアー:嶋内秀之、撮影者:高田梨菜)

経歴

2005年フューチャーベンチャーキャピタル(株)入社。2009年から(財)京都高度技術研究所にて起業支援、2011年から(株)サンブリッジのインキュベーション施設「GVH Osaka」立ち上げやIT分野のシードステージ企業への投資活動を行う。
2015年8月ハードウェアスタートアップのためのアクセラレーションプログラムを提供する株式会社Darma Tech Labsを共同創業。

創業の想いと事業立ち上げの背景


今回、日本初の量産化試作を対象としたハードウェアベンチャーのアクセラレータープログラム『Makers Boot Camp』を立ち上げて、現在動いています。「関西で京都をハードウェアベンチャーの都にしたい」という想いで立ち上げました。
近年、メーカーブームが起こっており、世界中でハードウェアベンチャーが活気を呈しています。中でも、スマートウォッチを販売するPebbleという会社は、クラウドファンディングで10億円以上の資金調達をした企業として話題になりました。この代表者のエリックは、大阪のイベントにもスピーカーとして来ていただいたこともあり、関西中心にハードウェアベンチャーを盛り上げていこうという動きができています。関西だけではなく、世界全体でこのハードウェア・ベンチャーが非常に盛り上がっている状況です。

ハードウェア・ベンチャーを取り巻く環境


ハードウェアベンチャーを支える環境も出来上がっています。1つは「Dragon Innovation」で、ハードウェア・ベンチャーのサポートをする機関です。それから、世界中から利用できる「Kick Starter」と呼ばれるクラウドファンディングのサイトです。もう1つは「Tech Shop」という、DIYと呼ばれる工房です。ハードウェア・ベンチャーでやっていこうとすると非常に高額な機材や機器が必要になってきますが、そういったものをシェアリングしていく施設です。
こういった中で忘れてはならないのが”世界の工場”中国です。実は、ほとんどの企業の量産化は、中国の台湾で行われています。こうしたところをサポートする機関というのも生まれていて、製造業のレクチャーと投資を行う「HAXLR8R(ハクセラレーター)」といった機関や、シリコンバレーには「Highway1」というアクセラレーターもあります。
中国とアメリカの結びつきは、私たちが思っている以上に深いものになってきていて、アイディアや資金調達はアメリカ、製造は中国という流れがトレンドになっています。

ハードウェア・ベンチャーの課題


すべてが上手く行っているかというと、そうではないところもあります。実際、「Kick Starter」というクラウドファンディングで資金調達に成功した企業のうち75%が製品ローンチに失敗しているのが現実です。
例えば、「Triggertrap Ada」というイギリスの会社は、スマートフォンでカメラのシャッターを自動で操作できる機械をつくるためにKick Starterで資金調達をしました。日本円で約1000万弱の資金を集めようとしたところ、約6倍の資金が集まり、資金調達は大成功しましたが、その後製品を出すことができずに出資金を返金したということがありました。このように、資金調達をした75%の会社が同じような状況で、製品ローンチがなかなかできていません。

ハードウェア製造プロセス


現在、ハードウェアの製造の複雑さに問題があると言われています。①コンセプトの段階から、次に②デモ用試作→③展示会用試作→④量産化試作→⑤販売という流れになっていますが、多くのアクセラレーターが支援しているのは③展示会用試作までの段階です。
展示会用試作というのはある程度完成品の姿が見えてきている段階で、これに基づいてムービーを撮影したりして「Kick Starter」等に出すことで資金調達ができます。実はその後に来るのが量産化試作という段階で、それまでとは全く違った工程が必要になってきます。
この段階では1,000個、10,000個を製造しなければなりませんので、それだけに耐え得る部品なのかという課題がでてきます。それから、③展示会用試作までの段階では3Dプリンタに通すだけで作れますが、④量産化試作では金型で作っていきますので、金型に見合った設計かどうかという点も問題になってきます。
電子基板の設計も全く同じ問題点で、③展示会用試作までは人間の手で作るので複雑な工程でも出来てしまうのですが、量産化の段階では機械が電子基板を打っていくため、機械が打ちやすい設計になっているかどうか検討しなければなりません。こういった点から、多くの企業は④量産化試作を再びやり直しているという状況があります。
このような問題を解決していくことがハードウェア・ベンチャーを加速させていくために重要なことだと思い、そこに着目しました。中国は元々仕様が固まった物の量産化は非常に得意なんですが、仕様固めの段階をあまり経験してきていません。そこで、一気通貫の日本企業では、それができると考えました。
 
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