シリコンバレーでは当たり前の考え方となっている、リーンスタートアップ。
でもリーンスタートアップってベンチャーだけのものじゃないの?
そういった方向けにこの記事では、ベンチャーと大企業、それぞれの導入事例をまとめてみました。

今回出てくるリーンスタートアップの基本用語

リーンスタートアップには、いくつかの専門用語があります。今回は事例紹介に出てくる3つについてのみ、ご紹介します。

MVP

MVP?野球の話?
と思われるかもしれませんが、リーンスタートアップにおけるMVPとはMinimum Viable Productの略であり、あれもこれも搭載せず、極力シンプルにした価値ある製品のことを言います。プレゼンで言うところのたたき台といったところですね。
MVPには特定のターゲットに対して提供する価値を1つだけに絞って、最低限の時間とコストでの製作を可能にするという特徴があります。

構築→計測→学習

作ったMVPをどう活用するかと言うのが、この「構築→計測→学習」です。
リーンスタートアップ版のPDCAであり、MVPを構築し、特定のターゲットに使ってもらって使いご心地を計測し、使ってもらった感想をもとに学習し、次の構築に繋げると言うサイクルをできるだけ早く・何度も回していこうと言う考え方です。

ピボット

英語で「旋回する」という意味のピボットはビジネスにおいて、事業の「方向転換」「方針変更」を表しています。
「計測の結果、今MVPで提供している価値は顧客のニーズと一致していないのではないか」といった時にピボットを行います。
それでは実際の事例に沿って、これらがどう使われているか見ていきましょう。

ベンチャーのリーンスタートアップ事例

Instagram


出典:play.google.com

リーンスタートアップの事例で最も有名な事例の一つにあげられるのが、Instagramです。インスタ映えは2017年に流行語にもなり、今年はインスタ萎えというワードも流行っていますね。
さてそんなInstagramですが、元々は「Burbn」という位置情報共有SNSというアイデアでスタートしたものでした。しかし、一度リリースしたものの思った以上に人気が出なかったので、アイデア構築・計測・学習を繰り返し「写真の共有機能が一番人気の機能」ということを発見しました。
そして検証の結果、Burbnは写真投稿を中心としたSNSに「ピボット」し、今まで作ったものを置いて、わずか8週間でリリースさせたのです。
もちろんたった8週間で今の状態になったわけではなく、最初のリリースでは写真投稿・コメント・いいねの3つの機能だけでした。まさに「MVP」ですね。その後のアイデア構築・計測・学習によって写真のエフェクトなどの機能は追加されていき、今のInstagramになりました。

Groupon


出典:play.google.com

定価の10%以下で欲しいクーポンが買えることもある、共同購入型クーポンの元祖・グルーポンもリーンスタートアップの代表事例の一つです。ではグルーポンはどのように誕生したのでしょうか。
始まりは、The Pointという「寄付を集めるためのプラットフォーム」でした。解決したいことはあるけれど、一人でできる金額じゃないから何もできない、じゃあみんなで少しずつ出し合おう、というソーシャルをなサービスです。
しかしThe Pointは思うような結果が出ませんでした。そこで作られたのがクーポンの共同購入サービスのMVP、グルーポンです。
グルーポンのMVPの面白い点は「WordPressで作られた一つのブログ」というところです。最小限に抑えるというのがMVPの基本ですが、グルーポンは本当に最小限だったのです。具体的にはそのブログでTシャツを販売し、クーポンは手作業のPDFをメールで送るところから始め、「集団でクーポンを共同購入してもらうことは可能か」という点だけを調べました。
そこでニーズがあると学習し、1年足らずで共同寄附から共同購入へ大きくピボットしたのです。その後も店舗主導のクーポン提供(Groupon Stores)やクーポンでなく商品の提供(Groupon Goods)、など多くのアイデアを構築・計測・学習しました。


大企業のリーンスタートアップ事例

Nordstrom


出典:flickr.com

大企業における導入事例としてあげられるものの1つに、Nordstrom(ノードストローム)があります。Nordstromはアメリカで最大の高級百貨店です。日本に店舗はありませんが、西武百貨店が国内販売権契約を行っています。
さて、そんなNordstromが開発したのは「サングラスを選ぶ顧客のためのアプリ」です。2種類のサングラスをかけた写真を並べて見られる、というものです。
このアプリ開発の際に行ったのが、「サングラス売り場に開発環境を持ち込み、MVPのアプリを試してもらったフィードバックをその場ですぐ直す」というものでした。確かにその場で直すほど確実な方法はありませんよね。
これを毎日繰り返したところ、なんと1週間でアプリが完成したのです。PDCAサイクルの無駄を極限までなくすことに成功した事例といえるでしょう。

食べログ


出典:tabelog.com

「食べログ」は価格.comでも知られている株式会社カカクコムが運営しているサイトで、同社が東証一部に上場するのとほぼ同時のタイミングに開設されたものです。「このお店の星の数は・・・・・・」と検索したことがある方も多いのではないでしょうか。
そしてこの食べログこそ、日本の大企業におけるリーンスタートアップの代表的事例といえるかもしれません。
というのも、リリースされたての頃の食べログはグルメ本の情報をもとにした、手打ちのデータベースであり、生みの親である村上敦浩さんも「考えているものの30%しか実現できていなかった」と話しています。
そうして出した食べログを、ユーザーが100人もいない当時、改善要望の掲示板からフィードバックをもらって、可能な限り早く対応し、次から次にサイトを改善していきました。
まさにこれは「構築→計測→学習」に当たるものといえるではないでしょうか。

結局のところどこが違う?

ここで一度、4つの事例をもとにベンチャー企業と大企業、それぞれのリーンスタートアップについて知覚マップを用い、整理してみましょう。

起業tv編集部作成

ベンチャーと大企業における違いは大きく2つあります。
1つ目は「ピボット」です。
ベンチャーは組織に柔軟性があり、ビジネスモデルが変化することもそう不思議ではないので、「計測」の結果によっては大胆なピボットができるでしょう。
それに対して大企業では、トヨタ生産システムを実行できるような柔軟性がない限り、組織の意思決定に時間がかかるという課題があります。そのため大企業では、InstagramやGrouponの事例のような大胆なピボットというのは中々に困難です
もう1つの違いは「導入の規模」です。
人数が少なく動きやすい上、事業の維持よりも成長が求められるベンチャーではスピーディーなリーンスタートアップが全社的に用いられます。
しかし大企業においてはトップ層など社内の人間だけではなく、株主をはじめとする数多くのステークホルダーにも配慮する必要があるので、スピードを最優先するわけにもいきません。そのため、リーンスタートアップは全社的でなく、部門や事業、個人単位での導入になってしまいます。
ピボットの自由度、導入の規模、どちらも多くの人や関係を持つ大企業においては小さくなってしまうんですね。

それでも取り入れる価値があるリーンスタートアップ


起業tv編集部作成
では大企業にはリーンスタートアップのやり方はマッチせず、取り入れないほうがいいのでしょうか?
答えはNOです。ベンチャーのような完全な導入は難しくとも、リーンスタートアップを一部でも導入することでPDCAサイクルを回す際の無駄を大きく削減することができますし、顧客から学べるところは学ばさせてもらうという考え方を取り入れる価値はあるでしょう。
PDCAサイクルを現在実行しているすべての組織において、活用することができるのがリーンスタートアップの考え方ではないでしょうか。

新規事業を失敗させないためには


企業が新規事業で失敗しないためには、リーンスタートアップの知識をしっかりと理解し、その上で課題をしっかりと深掘りし、解決策を見つけ、小さく改善を繰り返していくことが大切になってきます。

リーンスタートアップの最低限の知識を知っている、いわば新規事業創造のための型を知っているということは失敗のリスクを直接的に下げることができることに他なりません。

カスタマージャーニー、エンパシーマップ、AARRR指標、PMF、CPF、VRIO分析、ユニットエコノミクスなどなど……。

みなさんはどれほどの知識があるでしょうか?

知識があるというだけで、失敗のリスクは劇的に減ります。
そして知識を活用できる段階に入ると失敗のリスクはさらに下がります。

これから起業や新規事業を興す人が先ほど挙げたような語句を理解していないと、成功させることはかなり難しいと思われます。

しかし、知識はもちろん学べばいいのです。

これまで起業や新規事業、マーケティング系の記事を書いてきた起業tvの運営会社アントレプレナーファクトリーとAmazon経書関連40週連続1位の『起業の科学』執筆者田所雅之氏がコラボした、新規事業創造の型を身につける動画サービスが「enfacスタートアップサイエンス」です。

AARRR指標やこの記事でも取り上げたリーンスタートアップの弱点や活かし方などの新規事業創造には欠かせない知識を105本の動画に詰め込んでいます。
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