オムロン コトチャレンジとは?

KDDI∞LaboやIBM BlueHub、デジタルガレージのOpen Network Laboなど、多くのシードアクセラレータプログラムが開催される中、7月23日、関西でハード系ベンチャーに特化したプログラムが開催された。オムロンベンチャーズ株式会社が主催する「オムロン コトチャレンジ」である。
「事業会社がインキュベーション事業(ベンチャーの評価・育成)を行うことができるのか?」と思う方もいるかもしれないが、オムロンはその点、自分たちの強みを十分理解している。
それは、モノづくり力とグローバルメーカーとしての展開力である。2回目となる今回は、オムロンのOBも含めた匠集団がメンタリングすることで、メーカーとしての専門性を十分発揮している。メンタリングの会場も草津事業所内にあるクリエイトラボで行われた。また既存のネットワークを用いることで、ビジネスアイデアのニーズヒアリングや、開発に向けたパートナー探しの点でも全面的にバックアップしている。
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出典:www.omron.co.jp
今回は34チームのエントリーがあり、その中から選ばれた5チームが3か月間の製品/サービスのブラッシュアップを行った。その成果報告会の様子をお伝えする。

選抜を勝ち抜いた出場チームのプレゼンテーション

1.AMI株式会社

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素材提供:オムロン株式会社
最初の発表チームはAMI株式会社の小川晋平代表。小川氏は現役の循環器内科医であり、プロダクトは「大動脈弁狭窄症自動検出器」。「無症状の時に聴診で発見が難しい」という課題を解決し、「突然死を0にする」のが目標。最近はカテーテルでの手術も可能だが、症状が出現してからの生存率は、格段に下がってしまうのがこの病気の難しいところである。
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素材提供:AMI株式会社
さらに、プロダクト開発期間中に機能を追加し、「遠隔診療に対応している聴診器がない」という課題にも対応。遠隔診療の現場に対応した聴診器を普及させることも目指す。
2015年8月、厚生労働省が事実上の遠隔診療の解禁したことが追い風となり、離島・避難所・一家に1台(定期受診の人がリアルタイムで受診できる)という環境が実現する日も近いかもしれない。
 

2.メディカルフォトニクス株式会社

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素材提供:オムロン株式会社

2チーム目はメディカルフォトニクス株式会社の飯永一也代表。採血無しで血中脂質を計測できる装置を開発し、現在その精度を高めている。
内臓脂肪型肥満になると、食後高脂血症や高血圧、食後高血糖を引き起こし、そこから様々な病気に進展してしまう恐れがある。中でも高脂血症は簡単に検査する方法がないという状況であったが、メディカルフォトニクス社は光で食後高脂血症を計測することに成功した。
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素材提供:メディカルフォトニクス株式会社
「いつでも、どこでも、簡単に脂質検査ができる環境を作り出す」を目指しているメディカルフォトニクス社。「第二の血圧計」となるべく、まずは研究者向け、その後一般向けに販売していく予定となっている。
 

3.eNFC株式会社

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素材提供:オムロン株式会社
3チーム目はeNFC株式会社の和城賢典代表。交通系ICカードの「認証が面倒」という課題を、触るだけで認証できるプロダクトを開発。具体的には、従来、機器同士を接触させる必要があったものを、機器を身に付けたままリーダーに手を触れることで、情報通信することができるようになる。技術の秘密は人体通信とNFCの融合にあるという。
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素材提供:eNFC株式会社
eNFC社のプロダクトは世界で初めて、人体通信で交通系ICカードにアクセスすることを可能にしている。今回のプロダクト開発の中で、オリエンタルランドやANAでの導入実験を行ったという。
 

4. iFACTory

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素材提供:オムロン株式会社
4チーム目は今回の発表チームの中で唯一の学生チームであるiFACTory(大阪府立大学/大阪市立大学)の長野将吾代表。野菜の鮮度がわかる「せん時計」を開発した。このプロダクトがあることで、今まで感覚的に判断していた野菜の鮮度を客観的に判断できるようになり、利用者は適切な手段で野菜を美味しく食べることができる。
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素材提供:iFACTory
具体的な機能としては、
・自動鮮度センサリング(既存の光RGBでチェックすることで、制作コストダウン)
・栄養減衰通知アラーム(匠による味覚試験で閾値を設定し、鮮度の変化をアラームで通知)
・食のライフログ(今後、実装予定)
となっている。
 

5. U.W.I

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素材提供:オムロン株式会社
最後の5チーム目のプレゼンターはU.W.I(オムロン社内チーム)の和田晃氏。「新しい水質管理システムへの挑戦」として「水の安全見える化システム」を開発した。
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素材提供:U.W.I
日本の水資源は農業用水が全体の7割、工業用水が2割、残り1割が生活用水という利用状況となっており、最も利用割合の高い農作物の生育に関する水質管理に対象を絞った。具体的には水中の生物粒子を見える化(センシング)し、生物粒子の増加を抑制(コントロール)することで、水の安全性を確保する。

プレゼンテーションの結果発表

審査員にはオムロン株式会社、オムロンベンチャーズ株式会社、株式会社リバネスから計4名。厳正な審査の結果、以下のような結果となった。
最優秀賞:AMI株式会社
オーディエンス賞:iFACTory
審査員特別賞:eNFC

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素材提供:オムロン株式会社
AMI株式会社は、社会的課題の解決方法をクリアに示した点を高く評価された。小川晋平代表は「素晴らしいチームに恵まれて良かった。医者として、遠隔医療を全国に広げていきたい」と語っている。

オムロン コトチャレンジが日本を変わるきっかけにしたい

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素材提供:オムロン株式会社
最後に、審査委員も務めたオムロン株式会社・日戸興史氏からの一言で締める。

"近年、世の中の変革スピードが早くなっています。オムロン創業者(立石一真氏)が提唱したSINIC理論によれば、現在は最適化社会に位置します。これは、「世界が最適化に向かっていく社会だということ」です。・・・中略・・・最適化社会において、いろんな挑戦をするには自社だけではできません。ベンチャーのダイナミズムの中で、オムロンが率先して世の中を動かして行きたい。コトチャレンジのような活動をすることで日本に新たなエコシステムが生まれ、日本を変えていくきっかけにしていきたいと思います"

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