リーマン・ショック後、アルゼンチンを目指した銀行家

現在、アメリカ経済は絶好調と言われており、ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は、8月15日に過去最高値であるUS$18,636.05(終値)を付けました。好況を受けて金利引き上げも囁かれていますが、バブルを懸念する声もあります。
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出典:laurentfisch.com
金融界からも慎重な声が出ているのは、2008年に経験したリーマン・ショックを記憶しているからでしょう。100年に一度の経済危機と言われたリーマン・ショックは、アメリカ経済のみならず世界経済に多大な影響を与えました。
バブル状態であったアメリカの金融界は、リスクの高いサブプライム・ローンを積極的に展開していました。本来ならば信用力が低く、融資が難しい客にも高利で資金を提供する仕組みのサブプライム・ローンが崩壊し、証券大手のリーマン・ブラザーズが破たんします。
リーマン・ブラザーズ破たん後は、金融機関の倒産が相次ぎ、ダウ平均株価はUS$8000前後まで落ち込みます(現在の約半値)。ウォール街では、今まで高給を取っていた金融関係者が職を失います。その中の1人で、銀行に勤務していたRaaja Nemani氏という若者も会社を辞め、1年間の旅に出かけます。
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出典:matadornetwork.com
南米に向かったNemani氏は、アルゼンチンで運命的な出会いをします。その出会いから、現在ではアメリカで有名なユニークなシューズブランド・Bucketfeet社が誕生します。

旅先で声をかけられるシューズ

ブエノスアイレスに到着したNemani氏は、1人のアメリカ人と出会います。
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出典:www.entrepreneur.com
Aaron Firesteinと名乗るカルフォルニア出身の若者は、オハイオ州立大学を卒業後、スペイン語を勉強するためにブエノスアイレスに在住していました。
2人は直ぐに意気投合して友人になります。世界中を旅することが目的のNemani氏は、やがて次の目的地に向かうため、ブエノスアイレスを後にします。別れの際、Nemani氏はFirestein氏から一足のスニーカーを買い取ります。白地のコンバースのスニーカーに、Firestein氏がスプレイペイントで独自のデザインを描いたものでした。
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Nemani氏は特に何も考えず、そのスニーカーを履き世界中を旅してまわります。様々な土地を訪れるNemani氏は、あることに気が付きます。何処へ行っても、必ずNemani氏が履いているスニーカーのことが話題に上ります。中には、そのスニーカーを売って欲しいという申し入れまでありました。
 

フェイスブックを通じて起業を確認する2人

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出典:googirl.jp
2011年シカゴへ戻ってきたNemani氏は、フェイスブックを通じてFirestein氏に連絡を取ります。Firestein氏にシカゴへ移り住み、2人でスニーカーを作り販売する会社を起業しようと呼びかけます。
Firestein氏はこのオファーを快諾し、シカゴでBucketfeet社を起業します。Bucketfeet社のビジネスモデルは、今までにないユニークなものでした。
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出典:www.bucketfeet.com
世界中のデザイナーは、Bucketfeet社にデザインを提供するチャンスがあります。デザインをBucketfeet社に送り、それが採用されると靴にそのデザインがプリントされます。
それらの靴はBucketfeet社が製造し、オンラインで販売を行います。デザイナーには、デザイン料US$250が支払われ、さらに靴が1足売れるたびにUS$1がロイヤリティーとして付与されます。
ユニークなデザインの靴は瞬く間にネット上で人気を博し、ビッグビジネスに発展します。

セールスに繋がるマーケティングスキーム

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Bucketfeet社製品の販売が好調な理由は、そのマーケティングスキームによるところが大きいようです。デザイナーのSNSには、それぞれ2000名のフォロワーがいると言われており、このフォロワーが靴の情報を拡散してくれます。
現在では、約120カ国で約4万人のデザイナーがBucketfeet社へ、自分のデザインを提供しようとしています。グラフィックデザイナー、ファインアート、写真家まで幅広いジャンルのデザイナーがおり、それぞれの領域でBucketfeet社製品を広めています。
金融業界もBucketfeet社に注目しており、次々と資金提供を申し入れています。数百万ドル規模の資金調達を何度か行ったBucketfeet社は、2015年にはJumpstart Venture社からUS$750万の資金調達に成功します。
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出典:aloha.town.net
販路もネット以外にブルーミングデールなどの実店舗にも広げ、日本でもBucketfeet社製品を入手することも可能になりました。新しいビジネスモデルで急成長しているBucketfeet社に、今後も目が離せません。
 
 

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