今回のインタビューは、株式会社農業総合研究所 代表取締役社長 及川智正氏に、「参入障壁の高さ」「サービスの魅力」「事業のこれから」についてお話を伺いました。

競合が出てこないモデル

渋谷:今の事業のモデルだけだと、マーケットがそもそもすごく大きいですよね。私が驚いたのは、5500もの生産者さんが、もうすでに参画されているということです。自分ではできないけど、そういうモデルがあれば手を出してみたいなとか、JAさんともやってるけどこういうルートでも出してみたいなとか思っている若い農家もいると思うので、そういう新しいものにチャンレンジしたいなと思われる方々が、そんなマインドセットで広がりつつあるのであれば、同じようなモデルを大手がやってしまったら、結構広がってしまいそうな気もしなくはないのです。そのあたりの競合の恐怖、脅威みたいなものはないですか?
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及川:今のところはまったくないですね。我々のビジネスモデルは、競合がすぐ出てきてしまう、ハードルが低いのではないか、と言われますが、ハードルが高いところは大きく分けて2つあります。1つは、収益構造が非常に悪い。儲けにくい、ということだと思います。ある程度の物量を集めないとなかなか利益ベースまでのらないのではないかと思います。
我々の会社も利益が出たのは2年前からですので、2年前で流通額が大体30億。30億出さないと利益が出ないビジネス、誰がやるんですか。2つめは、農家と1対1でお話をしていくのは結構大変なことで、BtoCのような関係があります。農家をまとめるということと、あとスーパーマーケットをまとめるのも非常に労力がかかりますので、このへんから我々はたぶん競合する会社は出てこないのではないかと考えています。逆に出てきたら、やってみてください、と思うぐらいハードルは高いのではないかと思っています。
渋谷:BtoBといいますか、流通の過程でのコストがかかるモデルにしてあること、そのものが案外参入障壁を高めている、という部分があるということですね。儲かりにくいといいながらも、規模を早くとったもの勝ちなので、すでに規模をとられている及川さんのところはかなり有利なポジションにいると。
及川:9年前にやったからだと思います。あとは物流だと思ってまして、野菜果物というのはかさばって、鮮度が要求されて、グラム単価が安いものを、どう安く届けるか、というのが重要なポイントです。安くするためにはまとめるしかない。この「まとめる」というのが非常に大変で、我々もお店と生産者の数をたくさん獲得することができたので、商品をまとめることができたので、物流コストが安くなっていて、このへんが我々の強さの秘密かと思ってます。
渋谷:直売所は自分のところで運営しているものもあるのですか。
及川:自分のところではまったくやっていないです。
渋谷:全部スーパーに売ってもらっているということですね。
及川:そうです。スーパーさんにお届けするまでが僕らの仕事になっています。
渋谷:スーパーさんが直接やってるのか知らないですけど、時々、「誰それさんが作りました」みたいなものがあるじゃないですか。
及川:あの裏側を我々がやってるというイメージです。
渋谷:もし今度そういうのを見つけたら、及川さんのところかもしれない。東京や大阪、名古屋でやっておられる、わりとよく使うようなスーパーさんでも契約されていますか?
及川:大体30店舗以上の大手のスーパーしか弊社はやっていませんので、大手にはほとんど入っています。
渋谷:大手のスーパーも既存の流通ルートから買うものと、そういった形で買うものと分けておられるということですか。
及川:おっしゃるとおりです。今、大手のスーパーさんが「野菜で差別化をしよう」と思ったら、同じ市場から買ってくるんですね。すると同じ商品が並んでしまって、差別化は価格しかできないということで、差別化ということで我々のコーナーを入れていただいて、我々のコーナーのいいところは何かというと、原則、中一日、翌日にはスーパーさんにお届けすることができるのです。今までの農協さんの流通では3、4日かかってしまいますので、とても鮮度がいいということと、もうひとつは翌日に届くので熟度が高いものを届けることができることです。
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今までのトマトは緑のトマトをとって、3、4日でピンクになって、スーパーに届くと赤くなっている。でも一番おいしいのは木の上で赤くなったものですよね。こういうものも翌日届くのでおいしいものが買えるということと、あとはすべての商品に対して生産者の名前がわかることであったり、たくさん喜ばれているのは、選ぶ楽しさがあると。農家の方が値段を決めるので、例えば3本100円のキュウリがあったら、5本50円があったりする。宝物を探すような面白みがある。
渋谷:それはスーパーのバイヤーさんが?
及川:末端のお客様が。「これ、5本入ってるけど50円じゃん」みたいなことですね。
渋谷:スーパーの店頭でそういう値段付けになっているということですね。
及川:生産者がつけていくので選ぶ楽しさがあるというのと、あとは大量流通、大量販売では並ばないアーティチョークとか、リーキとか、ザクロとか、珍しい野菜や果物が買える。このへんが喜ばれてるところかなと。
渋谷:珍しい野菜を作っている個人の方が「生産者です、この流通にのせてください」と手を挙げれば、できるのですか。
及川:何をもって農家とくくるか難しいですが、農地を持って農業をやっていれば我々に登録することはできます。
渋谷:わりといらっしゃるじゃないですか。リタイアしてから、自分の土地を持ってる人などが、農作物を作ってるけど自分の消費と、近所にあげたりするような農家さん、結構いらっしゃるじゃないですか。ああいう方も対象ですか。
及川:ただ我々の仕組みの中の農家さんは、大型で専業で若い農家さんが多い。なので価格で競争できるか、というところだと思います。そこさえ競争できれば、そういう方も出荷してもいいのかなと思います。
渋谷:自分が作ったものがその流通にのって、最終的に消費者に届くということを喜びに感じる方というのは、たぶんいらっしゃるだろうなと、今なんとなく思ってですね。
及川:あります。面白い人たちがたくさんおりまして、あるおばあちゃんがずっと同じ会社の同じ店舗に送り続けてたんですよ。「こっちも売れるんじゃないですか」「いや、こっちには孫が住んでる」と。なるほどなと。「じゃ、宅急便で届ければいいじゃない」「いや、宅急便で届けるよりも、この流通を使って末端で買ってもらったほうが安い」と。なるほどと。あとはこの地域で働いてた知り合いが多いとか、そういう形で選ぶ方もいらっしゃる。いろんな方がいらっしゃいます。

事業のこれから

渋谷:今のお話を聞いていると、すごく面白いビジネスモデルで上場するか、しないかのご判断はどうだったかという話もありますが、これから先、3年後、5年後の規模感のイメージ、あるいは目標は持たれていますか?
及川:まずはみんなに喜ばれる農家の直売所事業を横展開していきたいと思っています。農業総合研究所は、農家の直売所をやりたくて立てたわけではなくて、日本から世界から農業がなくらない仕組みを作りたいという気持ちで作りました。そうするとお流通だけではなく、生産であったり、種屋さん、苗屋さん、肥料屋さん、農業は作るだけじゃなくて、作るところから口に入るまでがビジネスだと思いますので、種のところから口に入るまでのすべてをやりたいです。農業を深堀りしていきたい。
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あとは、農業という縦ラインの横に来るのが、委託販売というビジネスではないかと思っています。重なるところは農家の直売所という需要であって、例えば、農業だけじゃなくて、よくいわれるのは魚できないですか、お肉できないですか。たまに面白いのは雑貨とか絵画でできないですか、と言われます。できると思います。我々は委託販売のプラットフォームを作ってますので、店舗さんと生産者さえいればどの業界でもできるのではないかと思ってますので、委託販売のプラットフォームを整備していくこと。
最終的に目指しているのは、リアル楽天事業と呼んでいますが、うちの会社に登録していただければ、全国何千店舗のスーパーマーケットもしくは百貨店さんで、自由にリアルに店舗を持って販売できますよと。そういう仕組みを活用してみませんか。小さいメーカーに対しても自由な流通が選べる仕組み、そういうものを作っていきたいと思っています。

【IPO経営者対談】農業総合研究所についての動画はこちら

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