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【IPO経営者対談】農業総合研究所・及川智正×スマートバリュー・渋谷順③

今回のインタビューは、株式会社農業総合研究所 代表取締役社長 及川智正氏に、「起業して間もない頃」「初めての売り上げ」「農家をメーカーにすること」についてお話を伺いました。

やってみないと分からない

渋谷:お話の中で気になったところは「キュウリを売ってやってる」という態度の農家や、その親がいたり、既存の枠組みがあって、なかなか一農家さんでそれを打ち砕くのが難しいところです。もっというとJAバンクさんを使っていて、家のローンもそこで組んでいたり、いろんな関係、しがらみが染みついているのが日本の地方や農家の姿かと思います。そういう中でまったくしがらみがなく、東京から来られてやり始めたら、ITを目指してる人からすると、「ま、そういうことやるよね」「そのチャンレンジだったらやってみるよね」という人は多いと思いますが、農業の世界って、じゃ、直接スーパーに売りにいってみようかとか、そういう発想をしてる人はあまりいないのですか?

及川:いないと思いますね。どちらかというと、現場を軽視してる経営者が多いのではないかと思います。うちの会社の強みは、代表の私が現場で3年間農業をやって、1年間八百屋をやったことです。他にこんな人いますか?国の農業の人と話しても、両方やったことがある人間はほとんどいないです。そこが強みになっていると思います。

 

渋谷:逆にいうと生産だけで10兆のマーケットがあって、今までの既存の枠組みというか、サプライチェーンのある中で、イノベ―ティブに見えますが、もしかすると他の業界なら割と起こってる現象と同じようなところに切り込めたところが素晴らしいと思います。でも起業する気ではなかったのですよね?

 

及川:なかったですね。自分が社長をやろうと思ったこともないですし。

 

渋谷:そこがよかったんでしょうね。

 

及川:今でこそVCがベンチャーキャピタルという意味だと分かったのですが、昔はビタミンCかというぐらい、まったく会社の知識もなくて、会社の立ち上げも自分で全部やったぐらい何も知らなくて。その経験も生きたのかなとは思ってます。「よく上場までできたね。何が原因なんですか」とよくいわれますが、いろんな考え方あると思いますが、もしかしたら現金50万円しかなかったことが、プラスに働いたのかなと。

 

渋谷:そうかもしれないですね。

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及川:50万円の中で自分のやりたい流通というのはどういうことだ、と考えた結果、今の仕事ができているわけです。もし1億あったら、たぶんビジネスをやって失敗したんじゃないかと思います。ということは、マイナスがプラスに振れたのです。プラスがマイナスに振れることもあるんだなと思いました。私がとても大切にしてるのは、両極があるということです。いい悪いではなくて、両極あるということ。経営者はこの両極を、時代時代に合致したバランスを見極めながら進んでいくことが重要かなと思います。マイナスは悪いことではないととても思います。

 

渋谷:それは思いますね。ものを持っていることが幸せとは限らなかったり、それが成功の秘訣かというとそうでないときも多いですから。ないことのほうが、結構実は重要だったりしますからね。

 

及川:そのとおりだと思います。

 

渋谷:これからIPOを目指したり、起業したりする方々もそうですが、農業の分野でもそうで、まだまだそういうイノベ―ションが起こせるようなマーケットやサプライチェーンとか環境がありそうですね。

 

及川:ありますね。たぶん渋谷さんのところにも、たくさん起業家が相談に来られると思いますが、私のところにも来るのです。来てもわからないですよね。ビジネスモデルを言われてもわからない。そんなこという前にやってみろ、と思います。

いろんな起業家があっていいと思うんですよ。こうこうで、こういう道順を通ったから起業家、ということではなくて、いろいろなところからポンポン出ていいと思うんですよ。その中で、やったことがないことを「どうですか」といわれても、「わかりません」としか答えられないので、まずやってみて何かあったらまた相談に来て欲しいのです。そのときじゃないと相談に乗れないと思います。

 

渋谷:我々もよく未上場のときに、「なんで上場するの?」と聞かれて、「やってみな、わからんでしょ」と。「やってみながら、もの言おう」と、僕はそのときよく言ってましたが。やってみてから、また違う景色になりますから。駄目だったら駄目で。

 

及川: 成功の反対語は失敗じゃないと思いますね。やらないことだと思います。

 

渋谷:いいこと言いますね。

 

及川:やってみないとわからないですね。

 

ゴザの上から始まったビジネス

及川:たぶん皆さん、ビジネスモデルがあって起業される方が多いじゃないですか。私の場合は、ビジネスモデルはゼロで、とりあえず流通をどうにかしないといけない、ということで会社を作りましたが、1年間会社をやって、会社から給料をもらえなかったら会社をつぶすという約束と、1年間何があっても月10万円だけは家に納付をさせていただきますと。年間120万円でがんばってもらえませんか、という話をしたら奥様がOKを出してくれたから、今があるんじゃないかと思います。私だったら絶対NGです、10万なんてあり得ない。

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渋谷:子どももいっぱいいるのに。

 

及川:子どももいっぱい(笑)一番はじめの6カ月は、小学校の先生に夕方6時からパソコンを教えるアルバイトをしながらずっとビジネスを考えていて、はじめにやったビジネスが、本当に大失敗ビジネスなんですけど、農家のコンサルティングをやろうと思ったのですね。和歌山はミカンを作ってる農家さんがたくさんあって、それを農協に出すのではなくて、僕が三越とか大丸とか高い百貨店に売ってきてあげる。1本商流を作ってきたら5万円もらうみたいな、こんなコンサルの仕事を考えました。それがなかなかとれるんですよ。百貨店に行ったら「このミカンおいしいから、ぜひ入れてくれ」と。営業もとれて、3本商流ができたので15万くださいと農家さんのところに行ったら、ここが甘かったんですね。お金くれないんですよ。

 

渋谷:コンサルにお金を払うという文化がない(笑)

 

及川:田舎に行けば行くほどコンサルティングとわかっていただけないですし。

 

渋谷:ただのいい人ですよね。

 

及川:農家さんは目に見えないものにはお金を払わないですね。情報とか商流とか。でも家に帰ると、娘が二人おなかをすかして泣いている。これはどうにかしないといけないと思って、本当に困ったので「お金はいいからそこにあるミカンを30箱ください」と言ったんですね。農家さん、面白いですね。お世話になったのは気付いていて「ミカンなら50箱持っていっていいよ」といっぱいくれる。それをもらって、和歌山の駅前にござ広げて店頭販売を始めました。チャリンチャリンと100円もらったのが、うちの会社の売り上げのスタートです。はじめはグダグダやっていました。

 

渋谷:そういうご経験があるのは大きいですね。

 

及川:もうやりたくないですけど(笑)若いからできたんだろうと思います。

 

農家をメーカーにする

渋谷:32歳で農業総合研究所を起業されてから、最初はそういうビジネスもされて、今のようなサプライチェーンの変革というモデルになってきたのはいつ頃からですか。

 

及川:パソコンの先生をやっている6カ月後ぐらいですが、農家の方のミカンをござ広げて売ってたのが噂になったんですね。東京から来た兄ちゃんに野菜や果物を与えると、高く売ってきてくれると。僕は現金が欲しいんですけど、野菜果物がいっぱい集まってきて、その中で「田舎に道の駅、ファーマーズマーケットたくさんあるけど、少ししか売れないし、車がある人じゃないと買いにきてくれない。これを都会に持っていって、新しい仕組みで流通を作ることができないか」といろんな農家さんから言われました。そこで始まったのが、うちのメインのビジネス、農家の直売所です。

 

渋谷:差別化というか、競争力の源泉みたいなところは、すでに55カ所、660店、5500名の農家様と契約という関係になっているという、そのベースをずっと築いてこられたのが、今の段階では一番の強みですかね。

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及川:おっしゃるとおりですね。はじめ20名の生産者から始まって、今5500名。はじめ2店舗から始まって、今660店舗ということは、なんらかの形でいろんな方からありがとうを言われたのではないかと思ってます。なので、このビジネスをまず横展開していこうと思ってます。

 

渋谷: 一番冒頭に、農業とITベンチャーという言葉をおっしゃられたので、ITというところでいいますと、今のようなサプライチェーンをこれからずっと運用していくのに対して、なんらかのITの活用もされていますか。

 

及川:弊社の仕組みというのは、農家をメーカーにしたいと思ってるんですね。メーカーにするために、自分で値段を決められて、出荷先も決められて、自分で好きなものが作れて、好きなときに好きなだけ出せる。このメーカーポジションを支えるために、ITを使っていろんな情報の伝達をやらさせてもらってます。農家さんがいたら、近くの集荷拠点55カ所に野菜や果物を持ってきます。そこでまず、自分の好きな金額を決めていただいて、自分でシールを作って自分で貼っていただいて、好きな店舗を選べる。これを持っていってあげて販売をしてあげる。

この販売情報がITでつながっていまして、毎日スーパーのレジの情報を我々がいただいてデータ加工して、生産者の携帯とパソコンに売り上げ情報を返してあげます。「あなたの商品が、どこで何がどれだけ売れてます」という情報を返すことによって、翌日生産者がうちの集荷場に野菜果物を持ってきてくれる。

今までは売り上げ情報だけだったんですが、今は生産者ごとにポータルサイトを開設しまして、そこを見てもらうと例えば去年1年間の売り上げ、先週1週間、昨対比がわかったり、月末の入金金額がわかったり、あとは100個出して今何個余ってるかというロス率がわかったり、他の生産者がいくらぐらいの値付けをしているかがわかったり。

スーパーさんは我々のコーナーだけではなく、市場から仕入れてる野菜も売ってるので、市場から仕入れてる野菜はいくらぐらいで売ってるかという情報がわかったり。田舎にいながら、ITもしくは携帯電話さえつながれば、都会にあるスーパーマーケットの情報がダイレクトに、そういうところを今、ITでつなげています。

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【IPO経営者対談】農業総合研究所・及川智正×スマートバリュー・渋谷順①

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