> > > アイリスオーヤマ・大山健太郎代表:「会社の成長に人材が追いつかない」約3000人の社員を束ねる経営者の組織論【後編】
起業の決断

起業の決断

アイリスオーヤマ・大山健太郎代表:「会社の成長に人材が追いつかない」約3000人の社員を束ねる経営者の組織論【後編】

今回のインタビューは、アイリスオーヤマ株式会社の代表取締役社長である大山健太郎さんに「親族経営の経緯」「今後の成長戦略」「アイリスオーヤマの福利厚生」「今後の成長戦略」についてお話を伺いました。

 

アイリスオーヤマ・大山健太郎代表に学ぶ、潜在ニーズの見つけ方「アイリスがなければ今のホームセンターはなかった」【前編】はこちら

 

【経歴】

19歳で家業を継承、大山ブロー工業所(現アイリスオーヤマ)代表者に就任。 工場を国内8カ所に建設。1992年アメリカ、1996年中国、1998年 オランダなどに現地法人を設立し、現地生産、現地販売で事業を展開。 地方から世界で展開するグローカル企業に成長させ、現在に至る。

「お客さんはいても、人材が集まらなかった」親族経営のきっかけ

私が家業を継承したときには、ちっぽけだったんです。それがメーカーとして倍々で会社が大きくなっていきました。

地元で知名度がない中で、やはりビジネスチャンスはあるのでお客さんもたくさんいるということがあり、慢性的に人手不足だったんですね。

現場で働く方は何とか採用することができても、私の意思を継いでくれて、あるいは考えに共感したうえで営業やものづくりを展開してくれる方がなかなかいません

そうなってくると、それだけのある程度の「人材力」というのは必要になるわけです。

 

その当時は高度成長で、東大阪で現場の職員は集められても、そこそこの人材集めはなかなか難しい。

それと、8人兄弟の長男ということがあって、私は残念ながら大学はいけませんでしたが、私の努力で弟も妹もみんな大学に出して。そういう意味では、兄弟であって、ある意味でいうと育ての親的なところがあったんですね。

そんな中で、会社の成長と人材が追いつかない。実はこれは、ベンチャー企業がみんなぶつかる壁なんですよ

そこで、友人を誘うことも考えましたが、学生であったりもしたので、兄弟を誘おうと考えたのです。

「兄貴が頑張っているんだから、応援しよう」「自分が学校を出られたのも兄貴のおかげだ」というような、「絆」のようなものがあって、比較的みんなは会社のためというよりも、家族のために頑張ろうと思ってやってくれています。

絆はあっても生じるズレ

「絆」に関しては、血より濃い絆はないわけですから、この会社の絆には全然問題はないわけですね。

ただやはり、同じ兄弟でも考え方が違ったり、自分の将来に対する夢が当然ちがうわけです。それをお互いに共有しておくことは非常に大事でね。

単に働くところがないから来るとか、金銭面での条件が良いから来るのではなくて。「この会社をいい会社にしよう」という目的意識を共有させるということがやはり大事です。

野球でもサッカーでもそうですよ。ゴールをめざして何をどうするのか。みんなポジションがあって、ポジショニング・役割・機能が違うわけですよね。

そういうことをしっかりと共有する中で、ターゲットを決めて頑張るということが一番大事ですね。

 

いくら兄弟といえども、親子といえども、表面的な会社の目標・目的は分かるわけですが、やはり日常の些細なことの中でズレというものが出てきます。

そのズレをなくすためには、コミュニケーションの回数を増やすということが大事です。

ですから当社の場合は、毎週月曜日の昼に兄弟だけでランチミーティングをしています。仕事がどうこうではなく、お互い食事をしながら、お互いの気持を一致させるということをずっと続けていますね。

「会社は誰のものか」

アイリスオーヤマはおかげさまでグループで8,500人いる会社ですから、全部が親族であるわけではありません。

親族経営だから、みんなが「それは親族のためにやってるんだな」と思いがちです。ですが、そう思わないことが、思わせないことが大事なんです。

 

僕が常に言っているのは「会社は誰のものか」ということです。

もちろん会社というのは資本家のものなんですけど、社員のいない会社はないんです。ですから、やはり社員あっての会社なんだと。

そして兄弟だけではなく、社員においてもポジションの中で役割・機能があるわけなので、それをお互い明確にするために人事を公正に、オープンにするということが一番大事だと思いますね。

多面的評価で、人事評価を公正に

当社の場合は、大きくいうと5つのディビジョンがあります。

1つ目は、メーカーですから「ものづくり」、2つ目は作ったものを物流する「物流」、3つ目は商品を「開発」する部門、4つ目は「営業」、そして「管理」する部門です。これらは全然仕事の内容が違うんですね。

ですが、毎年新入社員が入ってくるとどこの配属にされるかわからないわけですから、やはり部署が変わっても、1人1人の意欲・能力をちゃんと公正に評価する必要があります。

そのために、2月のほとんど半分以上を人事評価のため費やしています。人事評価委員会は各部署の責任者がでて、そして個人。課題があって、プレゼンテーションをしていただいて、個別面談をする。

もちろんそれだけじゃなくて、去年1年間の自分の業績がどうなのかということを、これも個々ではなくグループで、オープンで評価をするということをしています。

 

働く人の立場に立ってみると、目標が何なのかをはっきりとしてあげなければいけない。そして、それを正しく「評価」しなければいけない。さらに、それと本人の持っている適性に合わせたポジショニングというか「配置」ですね。この3つが僕は非常に大事だと思うんです。

そのためには業績だけではなく「多面的評価」を行って、上司・同僚・部下が1人の人間を、最低15人ぐらいの人が評価をする。そういう評価も非常に大事にして進めています。

日本の企業文化を引き継ぐ福利厚生

この20年間、高度成長が終わったときの反動で、日本の非常に良い企業文化を切り捨ててきたと僕は思っているんです。

社内旅行も運動会も、あるいは飲み会もやめて、「給料を払ってるんだから、お前たちの給料で勝手にやれ」という風潮になってきたんですね。

 

ですけど私は一切、それには乗らなかった。

ですから、アイリスオーヤマでは全工場で社員・家族が集まって運動会をやっていますし、もちろん各部署年1回の社内旅行もやっていますし、年3回は会社の金で景気よくグループで飲み会もしてもらっています。

そういう俗にいうノミュニケーションやコミュニケーションには、非常に力を入れています。

それだけではなくて、本部のある角田工場にはジムもあったり、温水プールもあったり、テニスもあったりということで、工場内に「働く場」と「福利厚生の場」が一体化されています。

組織構築で大事にしていること

何よりも、社員にとって一番大事なのは、トップが何を考えているのかがわかることです。

当社は20年以上前から、毎週月曜日に僕が朝礼をしていますが、これはそれぞれにメールで送られるだけではなく、1年間が終わると「朝礼集」という形で本にして情報を共有しています。

特に最近ではテレビ会議が盛んなので、ライブで私や幹部社員の朝礼を全部共有するということをしています。

今では朝礼をしない会社も多く、挨拶をしない会社も結構あるわけです。僕はそれはおかしいと思っています。

 

当社の場合は、ウィークリーに「今週何をやるんだ」「こういうことを考えて、こうやろうよ」というメッセージを明確に社員に伝えています。

それだけじゃなくて、社員からも「ICデイリーレポート」という形で、社員であれば全員が300文字以内で自分の考えをメール配信することを行っています。要するに、相互交流を行っているということです。

一方通行だけでは言っている方が自己満足に陥るし、聞いている方は「まあそんなもんだ」と思っちゃう。

そういったことから、上司も部下もお互いが、メールでやライブ、本で情報を出すということは、僕は非常に大事だと思っています。

実は言うほど簡単ではなく難しいんですよ、習慣にさせるには(笑)

次のページ >  今後の成長戦略
1 2