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起業の決断

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上場後に気づいた「会社と自分の成長スピードのギャップ」フーディソン・山本徹CEOが水産流通の変革に取り組む理由【前編】

今回のインタビューは、株式会社フーディソン、山本徹CEOに、「エス・エム・エス上場の経緯」や「上場後に気づいたこと」、「起業する領域の選び方」についてお話を伺いました。

 

上場を目指し、事業が大きくなる様子が楽しかった

エス・エム・エスを起業するとき、私は創業メンバーとして参加しました。私自身が何かやりたいことがあって始めたかというと、全然そうではなくて。仲間4人で自分たちで考えたアイデアをもとにして事業を開始しました。

 

それがどんどん社会に受け入れられて、参加する人が増え、事業規模がどんどん大きくなっていくこと自体がすごく面白かったです。その面白さだけでもう十分だったんですよ。なので、社会的な意義や会社を創業する理由は、「社会にこういうふうになってもらいたい」というミッションを掲げてスタートしたわけではありません。それがなくても十分という状態でした。

 

「上場するまで一緒に頑張りましょう」と創業するときからずっと言っていました。創業から約1年後でミッションをつくり、「高齢社会の情報インフラを構築していきましょう」を軸にして人を採用して事業を進めていましたが、どうしても後付け感はありました。

 

結局、私自身はIPOすることを1つのマイルストーンに置いて会社に関わっていたので、IPOした後に目的を見失ってしまったと思いましたね。

 

改めて、「高齢社会に対しての情報インフラを構築する」ことに対して、自分の社会人人生残り30人を使ってやっていきたいかと考えました。本当にそうなのか、本当にそれでいいんだっけ?と考え、自分の中では答えが出なかったというのが実際のところです。

上場後に気づいた、会社の成長と自分の成長スピードの差

そもそも、何で仕事しているのか、3年間ぐらいずっと考えていました。何で仕事するのかなと。IPOを果たした今、自分がどういう状態になっているんだっけ?と考えたときに、幸福感があまり持てなかったんですね。

 

目指していたところに立っているのに、何でこういう状態なんだろうと、すごく不思議な感覚でした。IPOする前、私は役員からおりまして、その中で感じていたのは、「会社の成長に対して自分の成長が追い付けなかったこと」です。一方で、創業期からいるため、キャピタルゲインも十分もらっている状態でした。

 

つまり何が起きているかというと、自分の成長について不満足にもかかわらず、自分の成長の度合いとはレベルが違う、それをはるかに超えるようなキャピタルゲインを得ていたのです。「上場してすごいですね」「上場企業の創業メンバーですね、すごいですね」と言われることに対して、自分自身はやれている感が全然なかったのです。

 

せっかくその機会があったにもかかわらず、自分がそれを活かしきることができなかった。周りからすごく評価されているのに、自分自身でそのギャップがずっと埋められない状態だったんですね。なので、このギャップがあったまま、残り30年ずっとやっていくこと自体も私の悩みでした。居心地がよくて、創業メンバーと言ってもらえるけど、自分自身は全然納得していないので。

 

エス・エム・エスを創業したとき、アグレッシブに仕事に対して向き合っていた自分を知っている以上、そういうふうになりきれていない自分をよしとすることもできませんでした。なのでもう一回、そこは自分でチャレンジしていくのがいいんじゃないかなと思い、何のテーマで事業を始めるか決めてはいない状態で、エス・エム・エスは退職しました。そこからテーマを探したのです。

幸せとは「理想的な未来に、日々近づいていっている感覚」

エス・エム・エスをやめるときに思ったのは、自分が幸せになるということが重要だと改めて認識したことです。幸せになるために仕事もしているし、家庭もあり、人間関係もあり、学びがあるはずだと思い、幸せの定義をそのときに決めました。

 

理想的な未来に対して自分が日々近づいていっている感覚、変化している状態を「幸せ」と置きました。良いところに住んだり、いい車に乗ったり、おいしいものを食べていることは自分にとって「幸せ」ではなく、良い状態に向かって変化していることを「幸せ」と定義しました。

 

戦後の復興期とか、今と当時で生活水準が同じかというと、全然違うと思います。はるかに今の方がいいと思うんですよ。一方で、今と当時、戦後の復興期や高度経済成長期と比べると、今の方が生活水準が良いにもかかわらず、幸せ感では昔の方があったんじゃないかと思うんです。

 

日本という国の経済がどんどん成長し、明日はよりよくなると感じられる状態だったんじゃないかなと思っていて、今だと、それが感じにくくなっているのだと思います。今時点で切り取った絶対値でもって幸せになるということではなくて、明日よりよくなるんじゃないかという感覚。もしくはより良くなれたということで、幸せは得られるんじゃないかなと定義しました。

自分が知っている領域で起業することの限界

それは事業上でいうとビジョンそのものだと思います。事業でいえば、将来あるべき姿をビジョンとして置き、それに対してどういうふうにやっていけば未来に至るのかを戦略に落とし込む。それをどんどん実行していくことで、その未来に近づいていくということです。なので、そういう未来が描ける仕事をしたいなと思いました。

 

それでいうと、自分が知っている産業や事業領域というと、ヘルスケアとか介護とか医療、あとは不動産、それぐらいの領域しか知らなかったのです。では、その領域で今よりもよりよい未来を描けるか、資産ゼロのベンチャーとして、エス・エム・エスと同じ領域をやるのであれば、チャレンジする必然性が全然ないと思いましたし、不動産に関しても対象外だと考えました。自分が知っている領域だけでいうと、相当限定的だなと感じましたね。