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【新人教育】リクルートマネジメントソリューションズ・的場正人氏が語る『今の若者に響かない4つのセリフ』(前編)

今回は元リクルートのトップ営業であり、現在は営業強化のコンサルタントとして活動している リクルートマネジメントソリューションズの的場正人氏に、「今の新人・若手育成のあり方」について伺いました。

 

若手が伸び悩む「育成の構造不況」とは?

私は、いろいろな企業の教育をサポートする上で、15年位前からある変化に気が付きました。それはどこの企業に行っても「若手が育たない」「若手が辞める」という課題を抱えていることです。10社中8~9社からそのような話を聞くので、これは各企業の問題というより、世の中の構造的な問題だと思い、我々の社内でチームを作って研究をしてきました。

 

最初に「育成の構造不況」という要因をお話します。「育成の構造不況」というのは、以下の3つの環境が、若手が育ちづらい方向に変化しているという話です。一つ目が仕事の変化、二つ目が職場の変化、三つ目が若手そのものの変化です。

 

一つ目の仕事の変化とは、仕事がかつてないほど難しくなっているということです。買い手優位の時代が進み、お客様の要望はかつてなく高度・複雑化しています。それに加え、簡単な仕事はアウトソース、もしくは機械(IT)が代替し、正社員や社員には難しい仕事だけが残ります。

 

昔は、若手が成長するのにちょうどいい仕事が溢れていて、上司や先輩が「失敗なんか気にせずやっていいよ」と背中を押してあげたり、見守ってあげたりする中で、若手はチャレンジや試行錯誤を繰り返し、自然と育ちました。今はこのような、若手がちょうどよく育つレベルの仕事が社内にほとんど無くなっているということです。

 

次に、職場の変化です。仕事自体が高度・複雑化しているので、会社の中でも一部の優秀な人、あるいは上司・先輩でないとできないような仕事ばかりが残っているということは、上司・先輩はその仕事を自分がこなすことで精一杯で、若手に積極的に関わる余力がなくなっています。その結果、自ら周囲に働きかけながら、主体的に試行錯誤を繰り返し、自律的に成長してくれる若手を求めている、これが職場の変化です。

 

最後に、若手そのものの変化です。今の若手は、物質的に豊かな時代の中で育っています。少子化が進む中で、両親に加えて、おじいちゃん・おばあちゃんも欲しいものを買い与えて可愛がってくれます。これ自体は何も悪いことではなくて、豊かな時代の恩恵です。親の教育や学校教育も「褒めて育てる」時代となり、厳しく叱られたり、理不尽な思いをしたりする経験が少なくなっています。

 

また、もの心ついたころから、まわりにゲームやパソコンがあり、公園で知らない子と一緒に遊んだり、新しい遊びを創造したり、親の目の届かない所で冒険してみたり、というような経験が減っています。

 

その結果として、ハングリーさやチャレンジ精神、葛藤・軋轢に向き合う力、自ら働きかけて新しいコミュニティーを広げていく力、クリエイティブな創造力などが育ちづらくなっています。そして、興味関心や欲求も、出世や勝ち負け、やみくもにお金を稼ぐことよりも、自己実現や社会貢献、そういったことに変化してきています。

 

また若手はすぐに正解や近道を求めてきます。「ネットで調べれば正解が簡単に手に入るのに、調べもしないで失敗するなんて馬鹿じゃないか」と思う若手が多いのもうなずけます。世界中から正解を見つけてくる情報収集能力が発達した一方で、正解がないことに対して自分で答えを出す、あるいは意思を持って決めるという経験は、就職するまであまり経験していない、これが今どきの若手の変化です。

 

育成の構造不況をまとめると、かつてないほど、葛藤や軋轢、困難に向き合う経験が少ない状態で育った若手が、かつてないほど葛藤・軋轢まみれの仕事環境にいきなり直面するということです。また、武器である正解を探す力を活かす以前に、経験したことのない正解のない仕事・課題にいきなり直面し、戸惑うわけです。

 

入社を境に、“間逆の環境”に直面するのです。そこを理解していない上司・先輩たちが、そういう経験を積んで来ることが当たり前というスタンスで接していくと、これまでの生き方そのものを否定されたような気持ちになってしまうのです。

 

今の若手の能力が下がっているわけでも、意欲がないわけでもありません。我々のような上司・先輩の世代が作り出している社会環境が、若手の育ってきた経験を変え、積んできた経験が価値観・強み・弱みを変えているのです。

 

問題の要因は「経験不足」です。経験不足によって起こっている問題は、「経験を積む」ことで解決できます。

 

それを理解した上で若手を受け入れて育てるというように、受け入れ側の姿勢が変わっていかない限り、この問題は解決しません。なぜかというと、若手が育ってきた過去の経験を変えることはできないからです。変えられるのは入社後の経験だけです。

 

これを理解して若手の育成に向き合える上司・先輩をどれだけ企業側が用意できるか、これがこれからの企業の競争力向上に繋がってくる大切なテーマだと思います。

 

若手に響かない代表的なセリフとは

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次にこれを企業側が理解していないとどのようなことが起こるか、よくある事例を紹介します。上司・先輩などの指導者が若手に熱弁をふるうけど、若手に響かない代表的なセリフを四つご紹介します。

 

一つ目は、営業で言う「とにかく訪問しなさい」「行動量だ」「1日10件回れ」等の言葉。この「がむしゃらに回れ」という行動量系のアドバイスは、全く響きません。

 

二つ目は、「失敗を恐れずに挑戦しなさい」。皆さん、これを言っていませんか?これも、今の若い世代にはあまり伝わりません。

 

三つ目は、営業で若手に同行訪問した後、若手のやりとりを振り返って「自分が一方的にしゃべらずに、お客様のことを聞きなさい。ヒアリングしなさい」と言いますが、これも何のアドバイスにもなりません。

 

四つ目は、「分からないことがあったら、気軽に相談に来なさい」です。しかし、多くの若手はなかなか相談に来ません。

 

これらが指導者側の見方と、若手側の見方がすれ違う、代表的な四大場面です。

 

行動量系のアドバイスがなぜ響かないのか

「とにかく訪問しなさい。行動量だ」。これを言っている人たちは、その行動量を通じて、かけがえのないものを手に入れたという原体験を持っています。若手はその大切さを分かっていません。平気でこう言ってきます。

 

「そんなことしたら、お客様に失礼じゃないでしょうか。それって、自社の都合じゃないでしょうか」。これに対して言い返せない上司・先輩達が多くいます。この段階で終わってしまった時には、若手は納得しないので動きません。

 

一方、本連載でご紹介させて頂いた「一人前の営業になる6つの習慣」の講演に参加した若手は、最後の感想で自ら手を挙げて「行動量の大切さがわかりました。明日からとにかく全力で行動します!」と宣言してきます。この違いは何なのでしょうか?

 

私はこのアドバイスが間違っているのではなく、どうやれば若手が自ら「行動量の大切さ」を理解し、納得するようになるか、を考えることが大切だと考えています。

 

私は講演の冒頭で、自分の新人・若手時代の話を、20分位かけて話をします。美談というよりも、十中八九門前払いで、断り続けられた失敗談を、新人がリアリティーを持てるレベルで話をします。そして、多くのお客様にがむしゃらにぶつかり、失敗の連続の中から、そのエリアのお客様の本音や関心ごと、突破口につながるキーワードなどを自分で見つけていったことが自分の原点となり、営業の土台を築いていったことを丁寧に伝えています。

 

すると多くの若手が、その学びは誰よりもお客様にたくさん会い、お客様に興味を持ち、お客様の話を聞き続けないと得られないことだということに気づいてくれます。その後に、若手の方々にこう聞きます。

 

「私が数々の失敗を通じて学んだ『気づき』を、新人勉強会でノウハウとして最初から教えてもらえていたら、もっと早く結果も出たし、そんなに失敗をしなくても済んだのに、と思いませんか?正直そういう考え方もあるなと思う方は、手を挙げてください」と言うと、結構手が挙がります。そこで私は若手に次のことを伝えます。

 

確かに、一時的にはその方が効率もよいし、売れるかもしれません。しかし、それだけに頼ると、知っているキーワードが通用しなくなると「次のキーワードを教えてください」「次のヒントを教えてください」と、常に誰かから与えられるのを待つ状態になります。

 

私が新人時代に手に入れた最大の宝は、今の自分の礎となる“成長”です。それは、「お客様にがむしゃらにぶつかり、お客様の生声や本音を聞き続けたからこそ気づくキーワードや勝ちパターンを自分の力で見つける力」です。

 

だから私は、エリアが変わっても、扱う商品が変わっても、そのエリア、その商品ならではのキーワードを次々と見つけることが出来、どこに行っても通用する営業に成長することが出来たのです。

 

このことを若手自身に気づいてもらうために、私は先ほどの「新人時代のエピソード」を丁寧に伝えているのです。大切なことは若手自身が気づくことです。多少手間がかかったとしても、そのための丁寧な会話をしっかりやることです。新人・若手はその重要性に気付いた後は勝手に動き出します。それが「とにかく動きなさい」「失敗を恐れずに挑戦しなさい」ということを、新人に伝える上でのポイントです。

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登壇者紹介

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(株)リクルートマネジメントソリューションズ エグゼクティブコンサルタント
1993年リクルート入社。96年より現在のリクルートマネジメントソリューションズ
へ在籍し、営業の最前線で98年から2001年まで4年連続でMVP.VPを受賞。02年から
営業マネジャーになり、2年連続で最優秀営業課賞を受賞。その経験・実績を活か
し、08年より営業コンサルタントとして数多くの企業の組織強化および営業マネジ
ャー、営業担当の教育に携わっている。
営業組織における勝ちパターンの構築・浸透プロジェクト、これからの時代に通用
する価値提案営業が出来る営業を組織ぐるみで育てる営業教育体系構築プロジェク
トなどの経験・実績を豊富に持つ。 顧客に提供した価値の大きさや生み出したナ
レッジの組織貢献の大きさなどで評価する全社コンテスト「ナレッジグランプリ」
においても歴代最多受賞履歴を持つ。
北海道大学工学部機械工学科卒業、航空機自家用操縦士・航空機事業用操縦士資格
保有、著書に「リクルートのトップ営業が後輩に伝えていること ~一人前の営業
になる6つの習慣」(日経出版)がある。リクルートグループはもちろん、社外講
演も多数こなし、いずれも好評を博している。

株式会社アントレプレナーファクトリー

Yuta Sugano

立命館大学経営学部卒業。12年神戸大学大学院経営学研究科入学、14年アントレプレナーファクトリー入社。

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